彼と彼のささやかな無意識 | 黒チョコの嵐さんと大宮さん妄想書庫

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こちらは妄想書庫でございます。大変な腐りようです。足を踏み入れる方は、お気をつけくださいませ。

※BL妄想書庫です


苦手な方はお気を付けください





















そこはいつも違う表情をしている



嬉しそうにキラキラ輝いていたり

切な気にゆらゆら揺らめいていたり

追い払うように固く閉じていたと思ったら、ふわりと優しく包み込んだり



最近は、恥ずかしげにうつ向いていることが多いかな

だけどそれも、全く同じということはない



場所や時間などの物理的な要因か、自分と相手の精神的な要因か

それらの組み合わせが幾通り存在するのかは分からないけど

毎回絶妙に絡み合うことで、様々な表情になるのだと思う



「…うぅ」

「ニノ?」



だから、油断していた

「なにかが違う」ことに気付くまでに「なにかが違う」ことは何度も繰り返されていたんだ



「大丈夫?」

「…な…にが?」

「息が苦しそうだよ、辛い?」

「……え?そうかな…」

「やめとく?」

「えっ?…これ…を放って、やめる?ほんとに?」

「ちょっ…ん、ちょっとだけ辛いけど、処理なら一人で出来るし」

「苦しいとか、ほんとにないんだけど」

「そう?」

「うん」

「痛いとかも?」

「ないです」

「そっか」

「それでもやめちゃうの?」

「んー…ここを攻めるところから再開しようかな」

「…ぁあんっ」



今思い返せば、違和感はあったんだ

だから確認もした

でも本人さえも気付いていなかった


だから俺が気付くまでに時間がかかってしまったことも、仕方がないとも言える



仕方がない



そんなもの…




「言い訳だっ!」



バン!と音が鳴って、ハッと我に返った

何も映さなかった視界が急激に開く

他愛ない雑談や誰かのお気に入りの音楽が気ままに漂っているはずの部屋が、ピリリと凍り付いていた



「あの、大丈夫ですか?なにか問題が?」



机の向こう側に並ぶ顔が、心配そうにこちらを見ている



「ごめん、大丈夫」

「こっちはすぐに片付くのでお手伝い出来ますけど」

「ありがとう、でも本当に大丈夫

うっかり寝てた、夢…みてたかも」

「寝てた?目を開けながら?」

「そう、特技、仕事中にごめんね」



いくつかの机から笑いが起こって

「それは特技ですねぇ」

「器用過ぎますねぇ」

そんな声が部屋の空気をいつもの明るさに戻してくれる



…ふぅー

隠れて息を吐く



仕方がないだなんて言い訳だ

俺が、君の無意識に、気付けなかった

ただそれだけだ









吐く息が白くなる季節になった



「マフラーしていきます?」

「そうしようかな」

「これでいいですか?」

「うん、ありがとう

あ!待って!ニノも!」

「え~?」

「巻かなきゃ駄目、いつも薄着で出ようとするんだから」

「はぁ~い」


「はい、これでオッケー」


「ありがとうございますっ」



支度を整えて廊下を進む

玄関の手前、細い棚の上に並ぶ二つの鍵

片方を彼が


もう片方を俺が

僅かな重みを楽しむように手の中に持って、扉を外の世界へ押す



「いってきます」

「いってらっしゃい、いってきます」

「いってらっしゃい、気を付けてね」

「はいっ」

「んふふっ」

「あははっ」



一緒に部屋を出る

向かう場所も一緒

それでもこの挨拶は欠かさない、欠かしたくない



俺と彼の、大切な一日の始まりだ
















つづく