※BL妄想日記です
苦手な方はお気をつけください。
「ねぇ、和」
「ん~」
「背中、どうしたの」
「転んだ」
「矢の上で?」
「うん、まぁ」
「…ごめん」
「なんでよ、やめて、智は悪くないじゃん」
こちらに背を向けないように歩いていたから、鎌を掛けただけだった
「痛いよね…
それは、ここでは抜かないほうがいいの?」
「そうだね、帰ったら抜く」
厳命したはずなのに、友は傷を負っていた
無力な自分が歯痒くて、悔しい
「こうしたら…少しは痛みが和らぐ?」
傷に手を当てて、額を乗せる
「触ったら駄目だよ」
「嫌だ、触る」
「駄目だってば!」
「嫌だっ!」
逃げる背中を抱き締める
痛みさえも圧し殺す友の為に
早く良くなりますようにと懸命に祈った
「あれ~、智のお陰で楽になってきたかも」
「え?ほんと?!」
「うんっ」
「次からは俺が和の背中を守るからねっ」
「え~?」
「守るのっ!決めたの!」
「あはははっ」
その笑顔を
あなたの笑顔を
守るからね
万物に宿っていた神は還り
全ての扉はまた固く閉ざされた
亜種の命が消えると
それに守られていた小さな妖達が消え、均衡を失った森も湖も濁り、毒された
王の命が消えると
民の心は乱れ、国が乱れ、そして、自滅の道を歩み始めた
命を落としたのは亜種一匹と、若き王
しかし、その代償は計り知れないものだった
あの災悪を記した書は無く、語り継ぐ者も、今はもう存在しない
「あ~!これ可愛いっ!
なんの種類だろ?あんまり見たことないな~」
「えっ?そうなの?!和が知らない花なの?!」
「うん、知らない」
「これはねぇ!これはねぇ…
……青い花と、黄色い花です」
「え?智も知らないんだ?自分の庭なのに?」
「ド忘れしたの!」
「ぷぷーっ 格好悪~!」
「そうだよ!俺は格好悪いんだよっ」
「なんでそんな自慢気なのさっ」
「だって本当に格好悪いのに、誰も俺のこと格好悪いって言わないんだもん」
「へ~」
「…もう一回言って?」
「格好悪っ!」
「んふふふ~」
「あははははっ」
我は生きている
互いの胸にあった確かな熱さ
一辺を失ったのなら、一辺が生きる意味も無かったのか
風に揺れる小さい二つの花
この世を創造するものが神だと言うならば
この二つの種が枯れ落ち果てても
再び寄り添い
生きますように
終わり
最後までお付き合いくださいました皆様、ありがとうございましたm(_ _)m