カミシバイ 最終章・4 | 黒チョコの嵐さんと大宮さん妄想書庫

黒チョコの嵐さんと大宮さん妄想書庫

嵐さんが好きです。二宮さんが好きです。大宮さんが好きです。

こちらは妄想書庫でございます。大変な腐りようです。足を踏み入れる方は、お気をつけくださいませ。

※BL妄想日記です


苦手な方はお気をつけください。





















小鳥の囀ずりが聞こえる静かな庭


ヒュッと風を切る音がした直後、背中に鈍痛が走る



「…向こうも死なないと分かっててやってるんだろうけど」



肩から背中を覗くと、矢が食い込んでいた



「あからさまなのは久しぶりだなぁ


でもせめて、前から射てくれればいいのに」




王が臣下に呼ばれ、一人になった隙を狙われた



この矢に悪意は感じない


染み込んでいるのは恐怖


この世界に属さない者へ対しての畏れの念


第二、第三の矢で串刺しにされないのがその証拠



息の根を止めたら、祟られるとでも思っているのだろうか




辺りを見回して、固い石で出来た城壁へ寄る



「ふぅ…」



一つ息を吐いた



人型で過ごす時は人並みの痛覚が存在する

しかし、ここで妖の姿になれば大きな騒ぎになる



ギリリ…

歯を食い縛る音



石の繋ぎ目に矢の先を引っ掛けて、身体を回す



ボキッ



矢尻を身体に残したまま、他の部分を切り捨てた



「うぅ…地味に痛い…」



足元に転がる折れた矢



…これで死ねればいいのに



そんな言葉が落ちそうになる



この身が滅ぶことがあるとすれば、妖力を空にされるか、原型も留めないほど散り散りにされるかの二択

稀に寿命を迎えることもあると聞くが、こちらの世界でその生を全うした例は無い



「目立たないよね?」



もう一度肩から背中を覗いた






「隣国から接見の申し出がございました」

「こちらが力を得る好機でございます」



大切な友が来城していると知りながら、急を要するとは思えない報告の数々



王だから



ただそれだけで、全てが抑圧させる




小さくても日々の幸せを感じられればよい

人と、この地に住まう全ての生命が、穏やかに共存出来ればよい



願い、望んでも


志が通ることのない雅な王座



友と過ごせる時間は、短くて貴重であるのに


それさえも許されず、無下に奪われて


自分がここに座っている意味を見失いそうになる



「王様、いかがでございましょう」


「そうだね、いいと思うよ」



口の両端を上げて、頷いた






「和っ お待たせっ」

「うん」

「もう少し居られるよね?あっちのほうも一緒に散歩しよう」

「いや、帰るよ」

「…え?」

「智もやることたくさんあるんでしょ」

「それは後でやるから大丈夫だよ」

「大丈夫じゃないから呼ばれたんでしょーが」

「大丈夫なの!」



我が儘であることは分かっていた



勝手知ったる庭の散策

それが重要だったわけではない



己が己でいられる時間



友と過ごす大切な時間だけは、自分の力で望みたかった



「大丈夫なら…実は向こうの方も気になってたんだ

もう少し付き合ってもらってもいい?」



それを叶えられる唯一の友



「うん!行こーっ」



この笑顔の側に居るときだけ、自分が存在する意味を感じることが出来た

















つづく