※BL妄想日記です
苦手な方はお気をつけください。
③梅雨事件
「ただいま~」
俺のほうが遅かったはずなのに、部屋の空気が停滞していてむわっと暑い
リビングへ入って、テーブルの上のリモコンへ手を伸ばす
「あれ…なんで?」
なぜかボタンを押せないように、使用禁止の張り紙がしてあるリモコン
人工的な寒さは苦手だけど、いつもはこの蒸し暑さだけは無くしていたのに
なにかあったのかな?
「おかえり~」
「ただいま、これ故障ですか?」
「ちゃんと動くよ」
「使っちゃ駄目ですか?」
「うん、駄目」
「風邪引きました?」
「元気」
言葉通り、大野さんは元気そうだった
「風が無い分、外よりもムシムシしません?」
「するねぇ~」
そして、なぜか嬉しそうだった
「ニノ」
「はい」
「ぎゅ~」
高温多湿が続いていて、この日も例に漏れずムシムシしてる
俺を抱きしめてくれた大野さんの身体も、しっとりと汗に包まれていた
「シャワー…浴びてないんですか?」
「浴びてない、ニノにも浴びさせない」
「なぜ?」
「こういうの、今しか味わえないから
見てよ、ぎゅってした腕がニノに張り付いてる」
うっすらと汗をかいてる身体と、それを抱きしめてる熱の籠った身体
ペタリとくっつき合って、力を込めなくても離れない
「サラサラなニノも好きだけどさ
たまにはジットリと汗かくニノを味わいたい」
シャワーを浴びてないということは
一日で溜め込んだ熱さをそのまま纏っているってこと
俺の知らないところで起こった出来事を、一つも落とさずに全部持っててくれてるんだ
そんな大野さんに抱きしめてもらえて嬉しい
「私も…ジットリと汗をかいてる大野さんも好きです」
「そうだと思って、トレーニングしたままの身体にしといた」
「だからこんなに汗…」
真横に見える耳の後ろから、首筋を通って汗が落ちていく
無意識に舐めようとして、舌が出た
「ニノも、もっとジットリ汗にしてよ」
もう少しで届きそうだったのに、顔がこちらを向いてしまった
「したいですけど、そういう汗ってあんまり出ない性質なんですよね」
「まずは水分補給だな」
ペタリとくっついていた身体を離して、キッチンへ行く
ペタペタペタ
フローリングを歩く足音がすでに湿っていた
つづく