※BL妄想日記です
苦手な方はお気をつけください。
「大野さんから誘われる時って、いつも突然"行くぞーっ"ですよね」
「そうかぁ?」
「そうですよっ」
あれは、大野さんが卒業した次の年
『行くぞーっ』
「…へ?」
『初詣!お願いごといっぱいするぞ~!』
色んな場所が閉じる年末年始は、必然的に家に居なくちゃいけなくて
存在を消すように、静かに過ごしていた
『寒いからモコモコなの着て来いっ』
携帯から聞こえてくる声に心が緩む
『あと5分くらいで着くからなっ』
「…え?今から?!」
『そうだよ!初日の出も見るぞ~!』
楽しそうな声が途切れて、急いで支度をした
「さっむいなぁ~」
「あったかいです」
「は?マジで?!」
「はい、ぽかぽかです」
空気は肌を刺すように冷たい
だけど、大野さんの隣は、あの家のどこよりも温かい
電車に乗って、都心から少し離れた厄除け大社に着いた
たくさんの人が新年を祝していて
「明けましておめでとー!」
「明けましておめでとうございますっ」
大野さんと一緒に新しい年を迎えられたことが、すごく嬉しかった
冷たい風に凍える身体をジャンプしながら温めて、順番を待つ
「きたきた、よし、張り切ってお願いごとしよう!」
「はいっ」
カツン…コロコロコロ
お賽銭を入れて、丁寧に深く二礼、控えめに二拍手
大事なお願いごとだから、礼儀正しくしないとね
手を合わせて、目を閉じた
大野さんが今年も幸せでありますように
大野さんの家族が今年も幸せでありますように
心の中で唱えて顔を上げると
隣に並んで手を合わせていた大野さんは眉間にシワを寄せて、すごく真剣な顔をしていた
なにか重大なお願いごとでもあったのかな?
「…これにしようかな!」
「なんだか可愛いの選んだなぁ」
「この形と、この色が綺麗だな~って」
小さな鈴が二つ付いたお守りを買う
手の中で揺らすと、青と黄色のそれはチリチリンと鳴った
「どこに付けんの?」
「鍵です」
「そっかぁ~」
あの家を出るんだって決めてから
自分の部屋の鍵には、お気に入りのキーホルダーを付けようと思ってた
それを、大野さんと一緒に居るときに買えた
嬉しいなっ
「なにをお願いしたんですか?」
さっきの真剣さが気になって、隣を歩く大野さんに聞いてみる
「言ったらご利益減りそうだから言わなーい」
「え~?」
「ニノは?なにお願いしたの?」
「…ご利益減るなら言いません」
「だよな~、届くといいな?」
「はいっ」
大野さん家にたくさんの幸せが届くといいな
つづく