卒業・3 | 黒チョコの嵐さんと大宮さん妄想書庫

黒チョコの嵐さんと大宮さん妄想書庫

嵐さんが好きです。二宮さんが好きです。大宮さんが好きです。

こちらは妄想書庫でございます。大変な腐りようです。足を踏み入れる方は、お気をつけくださいませ。

※BL妄想日記です


苦手な方はお気をつけください。





















任期が今年度までの先生は、3月31日まで学校に来てると聞いて

俺は荷造りを始めていた



置いていかれるくらいなら



一緒に行こう



そう決めたから















先生と会える最後の日に、大きな鞄を持って学校に行った



俺は迷うことなく、美術室へ向かう



先生のことだから

きっと最後の日も、あの絵を描いてるに違いない




いつものように絵を描いてる先生の後ろ姿を思い浮かべながらドアに手をかけると

ガタンとドアが突っ張って、開かなかった



鍵がかかってる…?



「…うそ」



俺は急に不安になって

職員室に走った



もう会えないなんてことないよね?!




職員室のドアをノックもせずに乱暴に開けた

「先生っ!!」

その場に居た先生達が全員振り返って

「どうしたぁ?!」

担任だった先生が、びっくりした顔で立ち上がった



「美術の…あの美術の先生!どこにいるか知らない?!」

「あ~、あの先生かぁ」

「知ってるの?!どこに居んの?!」

「いや…」

「早く言えよっ!!」

「もう居ないよ」

「…………え?」

「急に次の赴任先が決まったとかで、昨日中に引き継ぎ終わらせて

退任手続きしてったよ」


「……そん…な……先生」


俺は目の前が真っ暗になり

足から力が抜けて

その場にへたりこんだ





俺のただ事ではない様子を心配した担任が

鍵を貸してくれたけど

あの人が居ない美術室に行ったって

なんの意味もない…



重い足を引きずるようにして階段を上り

美術室の前へ来た



先生が居ない



それを確かめるために開けるドアは

酷く重くて

いつも開けていたドアとは

全く別のモノに感じた





「…先生?」



呼んでも、居ないのに…



「…先生!…っ…ぅ…うっ…」



置いていかれたんだ



俺は一緒に、連れてってもらえなかった




あの口付けが

ほんとに想い出になっちゃった…





涙に濡れた頬に

微かに風を感じて顔を上げると

いつも先生が向き合っていた画板が残されていることに気付いて

思わず駆け寄った



それには、今までには見たことがない白い布がかけてあって

「完成…したんだ」

そんな気がした



「誰かにあげるって…言ってたのに…

でっかい忘れ物してますよ、先生」



いつも先生が絵を描く時に使っていた椅子に座り

画板と向き合うと

白い布に、ノートを千切ったような紙切れが、テープで留めてあった



それを見た瞬間

俺は立ち上がり、白い布を画板から取り去った




「…なん…で…」




そこには




パステルカラーで描かれた




俺が居た




それも、満面の笑みを携えた、俺だった





「ここから見える景色描いてるって…」



俺…だったの?

ここに来てた俺を描いてくれてたの?



「先生から見た俺って…こんな…笑顔……して…た…んだ」



せっかく先生が描いてくれた絵が

涙で滲んでよく見えないよ



先生は、いつまでも薄れない想い出を

俺に残してくれたんだ




ありがとう、先生












「…ふぅ~」



人生で一番じゃないかと思うほど涙を流してから

大きく息を吐いた



「…よし、まずは、卒業しますかね」



パステルカラーの俺を抱えて

美術室の鍵を閉めた











白い布に張られていた紙には

こう書かれてあった




『ニノ、卒業おめでとう』





ははっ あと2年も先だよ



でも…うん、頑張るね



そこで、待っててよね



俺、ちゃんと卒業するからさ、大野先生





















終わり