妄想小説です。BLの意味が分からない方&不快に感じる方はブラウザバックでお願いします。
「不正アクセスが行われたのは弟が会長職を務めていた期間内で、失踪する直前のこと」
「しかし、ハッキングするような技術を持つ人間が身元が分かるようなIPアドレスを晒すような真似をするとは私には思えません。それにハッキングから問題が表面化するまで時間を要していますよね・・・それが判明した経緯をお教え願えますか?」
大野の手元に渡った資料は、簡単に捏造できそうな程度の内容しか記されていない。
そんなものを証拠として提出するなんて、社長は正気なのだろうかと。
大野はそんなことすら考えていた。
「・・・ここにいらっしゃる名染さんから内々に私に連絡があった。うちのPCからの不正アクセスの痕跡が見つかったと。それが会長の遺言状開示があった少し後のことだ。そこから私がシステム管理室に命令して調査を開始した」
「そのような話は私の耳には入ってきておりませんが」
大野が不服げな表情で伝えると、
「どうしてお前に伝える必要がある?」
侮蔑的な笑みを浮かべた社長が言う。
「大野、お前は二宮に近しい人間だ。が、ただそれだけだ。あくまでお前は松本グループに雇われた立場にある顧問弁護士に過ぎない。一応、次期会長候補である二宮の側近的に動いているようだが、それ以上でも以下でもない。顧問弁護士に話が下りるのは、法的な介入が必要となった時だけだ」
「・・・不正アクセスなど絶対的に法的介入が必要な案件でしょう?」
「名染さんは穏便にことを終わらせようとしてくださっていると最初に伝えたはずだが?」
そこまで言われて大野が能面のような表情になり、
「つまり、二宮さんが犠牲になれば全て丸く収まるとおっしゃりたいのですね?会長選も投票ではなくM本潤さん単独での擁立となり取締役会の承認を得るだけで済む・・・と」
自分の名前が出た瞬間、潤が身体を硬くしたのが大野にも見て取れる。
できすぎた話ですね?
大野が小声で、けれど社長たちに届くくらいの声量で言うと、
「お前はまだ若い。世の中には綺麗ごとだけでは済まないことが山ほどあるんだよ」
社長は両肘をつき手を組んで顎を底に乗せた。
「・・・そうかもしれませんね」
そう言った大野の表情が諦めにも似たニュアンスを含んでいるように感じて、
「大野さん・・・?」
彼を見上げる二宮は不安な声で問いかけた。