【夏疾風】は、なじゅさんとのコラボ作品になります♡
妄想小説です。ご注意ください。BLの意味が分からない方はブラウザバックでお願いします。
なじゅさんのEP0↓
(episode1)
「俺が・・・ですか?」
「ああ、短距離の選手として・・・だそうだ。6月の全国大会の松本の活躍は凄かったもんな」
それはまさかの陸上強豪校からのスポーツ推薦枠でのスカウトみたいなものだった。
私立高校で、もしもそこに通いたければ実家を出て寮生活をするしかない。
その話は陸上に情熱を傾けてきた俺にとっては魅力的で、実際には1月に入って学力試験と実技試験を受ける形にはなるけれど、ほぼ確定だと思っていいと。
「考えておいてくれ。それから、いくら推薦枠だと言っても学力試験の点数次第では不合格もあり得るんだから受験勉強はしっかりやって・・・なまらないように体を動かすことも忘れるんじゃないぞ」
進路指導室でそんな風に言われて、
「考えておきます」
担任にはそう伝えてから俺と母は一礼してから部屋を出た。
夏休み期間中の午後の時間帯、蝉の鳴き声の大洪水と眩しく光る外の風景・・肌に当たって痛いくらいの太陽の日差し。
グラウンドでは後輩たちが部活に勤しむ声が聞こえ、遠くでブラバンが個々で練習しているのか纏まりのない楽器の音が響いている。
今までの俺なら絶対にワクワクしているはずなのに、心にかかったモヤモヤが存在感をどんどん増していいく。
うちの親は自主性を重んじるタイプで、否定も肯定もせずに俺に任せるって言ってくれているのは幸いだ。
でも・・・俺がその高校を選んだとしたら・・・どうやってもニノと離れることになる。
そんなの絶対に嫌だ。
フッと頭に浮かんだニノの姿、日焼けした俺とは違ってインドなあいつの白い肌と蜂蜜色の綺麗な瞳。
あまり感情を表に出す感じじゃないけれど、ふとした瞬間に見せてくれる笑顔が可愛くて俺は大好きで。
あの笑顔が見れなくなるなんて絶対にヤダ。
ニノは・・・俺が遠くの高校に行くって言ったら反対してくれるのかな。
めっちゃ賛成されたりしたら凹みすぎて2度と浮上できる気がしない。
その日の夜、ベランダからニノの部屋を覗いてみると部屋の明かりが点いていてまだ寝ていないことが確認できた。
いつものように柵を乗り越えて窓から侵入すると、
「潤くん・・・いらっしゃい」
机に向かって勉強をしていたニノが俺の方を振り返ってそう言った。
「うん・・」
そのままベッドに寝転んで天井を見上げた俺に、
「ねぇ、潤くんってば受験勉強大丈夫なの?なんなら一緒に勉強する?」
ニノが呆れ顔を向け、けれど今の俺はニノのその言葉から逃げたくて思わず顔を背けてしまう。
枕元にあった漫画を手に取って、
「お前だって受験生じゃん、それに勉強なら翔くんに教えてもらうし」
天邪鬼な俺が顔を出し、素直にニノと向き合って対話ができない情けない自分に嫌気がさす。
「そっか・・・そりゃ、翔さんは頭もいいし教え方も俺なんかより上手だもんね」
ちょっとだけ傷ついたみたいな表情を浮かべたニノ、途端に自分の中で罪悪感が湧き上がってくる。
ここでスポーツ推薦のことを話して、ニノが『ダメ』って言ってくれれば俺の進路は即決なのに。
「スポーツ推薦?いいじゃん!」
とか言われるのが怖くて言い出せないし、相変わらずニノの志望校を尋ねることもできないなんて。
俺は当分の間、スポーツ推薦のことをニノには秘密にしておくことに決めた。
なじゅさんのEP1↓