集中しているとき。
ゆづは、あちこち指をさしたり、呟いたり。
そして、胸をトントン。
私はいつもこの仕草で安堵する。
「大丈夫」
「できる」
「心を強く」
そんな確認をしている気がして。
ついに五輪シーズンが始まり、何やらざわつきを感じることもある。
それでも、そんなことに気を取られるのはもったいない。
感じている不安は、誰のため?
ゆづが私たちを不安にしたことなど、一度もなかった。
必要のない経験など、一度もなかった。
いつでも、最高の笑顔が待っている。
それを私たちは十分知っているはずだ。
いま、ゆづが目標に向かって、いよいよギアを入れるとき。
私たちファンが、追い風になろうと頑張る必要はない。
近づきすぎて風の流れを乱すより、ただじっと見守っていたい。
無風状態でも、ゆづは自分だけの力でゴールテープを切るだろう。
胸を、トントン。
「誰だと思ってるの。このオレだよ?」
そうでした。
あなたは絶対王者。
あり得ないほど美しくて気高い、伝説のスケーター。
ときに、ちびゆづの面影をチラリ覗かせて。
最高の舞台で、最高の演技を。
本気で、信じています。