モントリオールで迎えた朝。
今日、ゆづに会える——。
新作となるプログラムに衣裳、
初めて目にするそれは一体どんなものなのだろう？
その場面を想像するだけで、心臓の鼓動が早くなる。
本当に自分の前に現れるのだろうか。
どうしても実感を得られないまま、会場に入った。
ジュニア、ダンス、ペア、シングルと、それぞれ練習があるため、
すでに早朝から、選手、スタッフ、50人ほどの観客が集まっていた。
ここで、大事なことを思い出す。
今回初めて応援バナーを持参していたのだった。
イラストは、いつも素敵なゆづを描いてくれている「まっつん」さん。
壁に貼るものと、手持ちのもの、２枚を作らせていただいた。
貼るのがとっても楽しみな、大満足のバナーとなった。
（まっつん、大切な作品を使わせてくれて、本当にありがとう。デザインを担当してくれたわふちゃん、いろいろありがとう）
ゆづの目に留まることを祈って、1枚はキスクラの上に貼ることに。
それにしても、勝手のわからない初心者。
まず、弛まずに貼る方法がわからない（上）。
見かねた先輩方が丁寧に指導、さらにはお手伝いまでしてくださって、
やっとピシッと気持ちよく貼ることができたのだった（下）。
（ご協力ありがとうございました）
会場となったSportplexe Pierrefondsは、なんとリンクが４つも入っている。
アイスホッケーで使用されることが多いようで、他のリンクではキッズ、ジュニアクラスの練習中。さすが、ホッケー大国、層の厚さを実感した。
ゆづの練習時間が近づくと、明らかに会場がざわつき始めた。
どんな振り付けなんだろう、衣裳は、髪型は、と
誰彼構わず、話さずにはいられない。
そのくらい皆、ゆづが現れる瞬間を意識して、緊張していた。
なのに。。。
携帯に目を落としていて、ふと前を向いたら、
黄色なものが目に飛び込んで来た。一瞬で理解する。
もう、ゆづがいる！！
（うちの子かわいいでしょ、と言ってるようなオーサーパパが微笑ましい）
笑顔！
とにかく、ゆづはにこにこ。
コーチ２人もにこにこ。
ああ、元気そうでよかった。
久しぶりの、ファンの熱い視線を感じて滑りながら
何を思っているのだろう。
でもきっと間違いない。うれしいんだね、ゆづ。
氷上にいることが、音楽に合わせて舞うことが、
楽しくて仕方がない。
そんな想いがゆづの身体から溢れ出ていた。
すーっと心が落ち着いた。
もう試合は大丈夫。
ゆづが楽しめるなら、それでいい。
結果は自ずとついてくる。
気がつけば、
客席でさっきまで心配そうにしていた人たちも
皆、笑顔になっていた。
——スケートはやっぱり楽しいね。
そう、ゆづが言っている気がした。
——そうだね。それなのに、私たちは心配ばかりしていたね。
ゆづが苦しむくらいなら、スケートをやめてもいいとすら思っていた。
でも、この笑顔を見て。
曲に込められたゆづの願いを知って。
いま、私たちが何を言えるだろう。
スケートはゆづの人生そのもの。
氷の上が彼の生きる世界。
私たちは決して立ち入れない。
運命を変える力を持たない者はただ祈るのみ。
好きなように生きて。
思うままに突き進んで。
その姿を見せてもらえるだけで充分幸せ。
そんな気持ちを、改めて、強く実感した。
幸せな時間が終わろうとしていた。
花道から引き上げようとしていたゆづ。
しかし次の瞬間足を止め、くるりと振り向いた。
端に向け、2階に向け、手を挙げてお礼を言う。
ファンに寄せてくれる想いが切ないほどうれしい。
でも、そんなに大声で言わなくても大丈夫だよ。
しっかり、まっすぐ届いているから。
いつでも全方向、全力で心配になるけれど、
きっとそれがゆづなのだ。
だから、これからは、心配するよりも一緒に喜びたい。
いつもありがとう。
そしてこれからもずっと。
We 're on your side.
