河田真智子さんの写真集。
河田さんとは、
以前に中村征夫さんの写真展のレセプションで初めてお目にかかり、
その後、僕の写真展などにも毎回のようにお越し頂いている。
ご自身もダイビング雑誌の記者をされていたこともあり、
水中の世界のことにも造詣が深く、
お会いするたびにとても貴重なご意見や感想を頂いています。
先日、河田さんから二冊の写真をお贈り頂きました。
愛娘である夏帆さんの記録写真集「生きる喜び」。
重い脳障害をもって産まれた夏帆さん。
「 将来、歩くことはできないであろう
首もすわらず、座ることも、できないだろう
そして言葉を語ることもないであろう 」
写真集の冒頭にはこう綴られている。
病院で、一緒に旅をした遠い島で、
ご家族や近隣の人々との触れ合いの中にある日常の光景を
優しく優しく撮り続けている。
何度訪れる危機的な状況でも撮り続けられている。
その写真たちには夏帆さんの生きている姿と共に
河田さんの心の動きまでも写り込んでいる。
「 入院をして酸素マスクをつけ苦しい呼吸をするたびに
夏帆の顔は透明になってゆく
空気のなかに溶けて行ってしまうのではなか、と
怖くなり、写真を撮る・・・ 」
胸がしめつけられる。
まさに母と子の「生きる喜び」が詰まった写真集だ。
今年刊行された「ひとりひとりが宝物」は、
沖永良部島が舞台の写真集。
43年間にこの「天国のような島」と出合い、
以来そこに暮らす人々と生活の風景を撮り続けている。
写真集には実に爽快で良い顔をした人々が並ぶ。
河田さんと向き合った人が見せる、
ごく普通の「良い顔」なんだろう。
写真のテクニック。
人を笑わせるテクニック。
そんなものは関係無しに
写真に気持ちを宿らせる。
大切な宝物をひとつひとつ包み込んでいるような
優しい空気が感じられる素敵な写真集です。
どちらの本も機会があったらぜひ手にとってください。