静岡県 浜松市(旧・龍山村)にある龍山森林文化会館の大ホールにあるパイプオルガンです。
大ホールは、キャパシティが最大238名収容できる比較的小規模のホールで、その舞台に向かって左側に、パイプオルガンが設置されています。
パイプオルガン全景。

1990年製のドイツ・ボッシュ社(Werner Bosch)のオルガンで、No.838 の製造番号が付けられています。

外から見えているパイプは、数えようと思えば数えられる数なのですが、このオルガンに含まれている
全パイプ数は、788本!! もあります。(この巨大な木の大きな箱の中に、788本 全てのパイプが含まれています。)
パイプは外から見える金属製の他に、木製のパイプもあり、木製のパイプなら木管楽器系(フルート、クラリネットなど)の音、金属製のパイプなら金管楽器系(トランペットなど)の音が出ます。
そのパイプに空気を送って音を出します。
音を出すとき、どのパイプに空気を送るのかは、オルガンの向かって左側にあるこちらの音栓(ストップ)で決定します。

この写真は全部ストップをしまった状態なので、オルガンの鍵盤を押しても全く音が鳴りません。
出したい種類の音のストップを、引き出すことによって、音色を作っていきます。(注: ストップは、引き出したまま固定できます。)
オルガンらしい力強い音を出すには、このストップを殆ど全部引き出すことにより、オーケストラでいうtutti(トゥッティ…全部の楽器で演奏すること)を表現することができます。
それ故、パイプオルガンが『楽器の王様』といわれる所以です。
このストップの組み合わせをレジストレーションといいますが、このレジストレーションを決定するのも演奏者自身で、オルガニストのセンスが問われる最も大切な作業になります。
…ざっと述べるとオルガンの仕組みはこんな感じですが、これを詳しく始めると時間が幾らあっても足りないので、以下、大まかに。
コンソール(演奏台)に近づいてみましょう。

オルガンの椅子の少し上方から撮影した写真です。
手鍵盤が2段あって、
下が第Ⅰ鍵盤でメインの鍵盤(主鍵盤)になります。最もオルガンらしいプリンシパル系の音を担います。
上が第Ⅱ鍵盤でサブ鍵盤(スウェル鍵盤)なのですが、柔らかいフルート系の音を得意としていて、情緒的な表現が可能となる、サブ鍵盤ですが重要な役割があります。
千人以上の観客を収容できる規模の大きいホールなどは、手鍵盤も3~4段、パイプの数も何千本という更に大きなパイプオルガンが設置されています。
ペダル(足鍵盤)の写真です。

日本ではどうしても足鍵盤というと、某・日本の有名楽器メーカーの"エレクトーン"を思い出す人が多いのかも知れませんが、パイプオルガンのそれとは似て非なるもので、前者の足鍵盤は1オクターブ(13鍵)のみしかありませんが、パイプオルガンの足鍵盤は2オクターブ半(30鍵)存在し、両足の つま先と 踵(かかと)の計4支点を巧みに組み合わせて、演奏します。
足鍵盤を横からみた写真。

足鍵盤の右上にある、黒い斜めの厚板のようなものは、スウェル(ペダル)といって、オルガン本体内にあるスウェルボックスの窓を開閉できます。(スウェル = 上記第Ⅱ鍵盤に含まれる音。)この開閉によって、スウェル鍵盤の強弱もつけることができます。
オルガンの強弱については、基本的に、前述のストップのレジストレーション(音栓の組み合わせ)で作っていくのですが、このスウェルペダルは、更に小さく弱い音を表現するのに用いられます。

そして、その左側の3つの金色のペダルみたいなのは、カプラー(カップラー) coupler と言って、踏み込んで固定することにより、次のように音を連結することができます。
左から、
・Ⅱ/Ⅰ … 第Ⅰ鍵盤を弾いたときに、同時に第Ⅱ鍵盤の音も鳴らす。
・Ⅱ/P … 足鍵盤(ペダルPedal)を弾いたときに、同時に第Ⅱ鍵盤の音も鳴らす。
・Ⅰ/P … 足鍵盤(ペダルPedal)を弾いたときに、同時に第Ⅰ鍵盤の音も鳴らす。
つまり、上述のtuttiの部分は、このカプラーも全て踏み込んだ状態で演奏します。
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…なるべく、初めての人でも解りやすく説明してきたつもりですが、なかなか文章で説明するのは難しく、上手く説明できなかった部分も多々あって申し訳ございません。
…もし解らなかったら、「パイプオルガンはこんな風な構造になっているんだ~!」と、読み流すだけで結構です。
少しでも、オルガンに興味を持ってくれる方が増えると嬉しいです。
にも
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最後に、このパイプオルガンの仕様(ストップリスト)を記しておきます。
◆龍山森林文化会館 大ホールのパイプオルガン
(Tatsuyama Forest Art Center, Hamamatsu, Japan)
Werner Bosch Organ No.838 (1990), 788 pipes
第 II 鍵盤 (Schwellwerk) 56 keys ( C - g' )
1 Holzgedackt 8'
2 Blockflöte 4'
3 Nasard 2 2/3'
4 Octav 2'
5 Terz 1 3/5'
6 Tremulant
第 I 鍵盤 (Hauptwerk) 56 keys ( C - g' )
7 Principal 8'
8 Rohrflöte 8'
9 Octave 4'
10 Flachflöte 2'
11 Mixtur IV
12 Krummhorn 8'
足鍵盤 (Pedal) 30 keys ( C - f' )
13 Subbaß 16'
14 Octavflöte 8'
15 Posaune 8'
II / I , II / P , I / P
※ ちなみに…各ストップの後ろについている「'」の数字は、
音の高さを表します。8'(フィート)なら同じ音程、4'フィートなら1オクターブ上、
2'フィートなら2オクターヴ上、16'フィートなら、1オクターブ上の音が出ます。
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浜松市・龍山森林文化会館
静岡県浜松市天竜区龍山町瀬尻982-2
053-968-0331
[MAP]