寝床にいた夫は、朝仕事に行く支度をして出かける私に必ず声をかけてくれた

「気をつけてな」私は「うん」と言い慌ただしく出かけたが

時間に追われてゆとりをもって夫を気づかうことが出来ていなかったと今思う

仕事を終え急ぎ家に着くと夫は食卓の椅子に掛けていて「お帰り」と言う

相当体力がなくなっていても私が帰ってくるので這ってでも椅子に向かい

私を迎えていたのでは・・

迎えられる日まではという強い気持ちだったのでは・・・

自分が先に行くことに残す私への気遣いをこうして時を経てあれこれ思い起こすと

その心が尊く無念さにさいなまれる・・・何一つわがままなことも言わず

お尻の世話も「おかあさんにこんなことさせて」と遠慮の言葉・・・

人は親しい間柄ほど心配をかけたくないと悩み苦しむ姿を見せられないことがあると何かで見たことがあった。夫のいない生活は私には空しすぎる

決して戻ることのない日々

私がこの世を去るときは心の中で

お父さん、お父さんと呼びかけながら・・・。