9月18日の虎に翼 寅子の家族会議でのセリフです。
「そうね。その考えも正しいわ。
どの考えも正しいからよい落としどころを見つけないとね」
ホント、そうなんですよね。
「正義の反対は別の正義」と言われますが、本来は会社や団体での議論も〇か×か、右か左かではなく、どの考えにもそれぞれの正しさがある、だからまずはその考えを認め合ったうえで、よい落としどころを探るために話し合いベターな結論を導き出す、そんな形で進めていくのが理想ということですよね。
先日、私の居住地域で朝7時頃に農道の草刈りをしていたらパトカーが来た、こんな話が聞こえてきました。
居住地域は、市街化区域と市街化調整区域が入り混じり、田畑があるので週末はどこからともなく草刈り機のエンジン音が聞こえてきます。
以前は涼しい時間帯に草刈りをと朝の5時頃からエンジン音が聞こえていて、地域の皆さんもご事情を概ね理解されていたので特に苦情もなかったようですが、週末の朝5~6時から聞こえるエンジン音は確かに気になるしうるさいんです。
私も家の周囲の道路の法面を年に4,5回刈りますが、概ね7時過ぎなら大丈夫と暗黙の合意がされていたんですが、新たに宅地開発された住民の人はそうしたご事情を全くご存じないため、うるさいから何とかならないかとの通報のようでした。
うるさいのもよくわかるし、朝早くから作業したいのもよくわかります。法律違反や条例違反をしているわけではないので警察も行政も何もできないのが現状、ゴミ収集車が収集の合図で鳴らす音楽も「子供が寝ているから鳴らすな」と言われる人もいれば、「音楽が聞こえないからゴミ出しが間に合わない」とお叱りの声が出す人もいらっしゃるように、どちらの言い分も間違ってはいません。
こうしたトラブルは他にもたくさんありますが、極端な事案以外は法では解決できないことばかりなので、その地域に暮らす人たちがそれぞれの考えを出し合って、よい落としどころを導き出すしかないんじゃないかと思います。
自治会や町内会はそこに住む人たちの集合体なので、何かをする主体というよりも、こうした話し合いをするステージを用意する、あるいはプラットホームの役目をすることが存在価値ではないかと私は思います。
昭和の時代は町内会に入らないと村八分的な空気は流れていましたが、それも徐々に薄れて、平成に入る頃には加入を無理強いするようなことはなくなっていて、自分の町内にも加入されない世帯は当時からいらっしゃいました。
自治会の加入問題については、ネット上では平成17年の最高裁判決がよく紹介されていますが、新しい集合住宅ができる町内会は、なかなか加入してもらえないのが悩みと仰っていたようにリアル現場ではもっとずっと以前から加入は任意ということはみなご存じで、その判決の加入・非加入への影響は特になかったというのが私の印象です。
平成以降は、私の暮す田舎では自治会・町内への加入率は横ばいから低下傾向です。
一方で、平成の大合併により自治体規模は肥大化、住民ニーズは多様化が進み、公の限界と言わんばかりに身近な住民サービスは住民自身の参加と協働のもとで展開するという動きが都市部の一部で起きはじめた、自治会の存在意義が再認識されるようになっているとまちづくり系のフォーラムなどに参加すると言われてきました。
特に2011年の東日本大震災の発生が契機となって、住民自身が公助よりも自助・共助、行政の下請けから住民自治の担い手へという意識は強まってきている印象は受けましたが、反対に超少子高齢化からくる加入率の低下、活動の担い手不足も顕著化していて、意識と現実の乖離を痛感させられています。
そうした現状を打破すべく自治会等加入促進条例はじめ自治基本条例や住民参加条例の中に自治会等への加入を規定するなど、自治会・町内会への加入促進に向けた取り組みを始める自治体が少しずつ増えてきているようです。
こうした条例の多くは理念条例で、特に罰則を設けていないのが特徴だと思います。
ちなみに居住市にはこうした条例はありません。
平成14年12月に制定された高森町町民参加条例がその先駆けといわれています。
条例制定に向けては、多くの自治体が勉強会やワーキンググループを設置、住民や法学者などの意見を聴いたうえで条例案を作成し、パブリックコメントを経て議会に提出されています。
専門家からは「加入の義務付けには法的限界があると言わざるを得ないので、努力義務にとどめておく方が望ましい」と意見されていて、実際「住民は、町会・自治会の重要性を理解し、自らが居住する地域の町会・自治会に加入するよう努めるものとする」と規定している自治体が多いようです。
努力義務違反は違法とは言わないからなのか努力義務を規定しても違憲とは言わないんですね。
中には「加入するものとする」という義務的表現の自治体もあり、小諸市自治基本条例が私が知る限り最も強い表現でした。
第9条(区への加入)
本市に住む人は、前条第1項の目的を達成するため、区へ加入しなければなりません。
次のように逐条解説されていました。
「区は、その地域の人たちによる、地域のことを最もよく知る自治の主体です。地域福祉、防災防犯等について、きめ細やかな対応をすることができ、よりよい地域を作り出していくためには、地域の人たちの話し合いの積み重ねと地道な活動がなければ成しえません。
このことから、小諸市に住む人はその地域の区へ加入して、地域の自治活動に参加するべきであるという理念を決意として規定しています。以下略
制定前の市民フォーラムやパブリックコメントで「違憲ではないか」という声が多数あり、ワーキンググループでも何度も議論が重ねられ、11名/16名の賛成でこの表現になったと資料にありました。
第9条だけでなく条例全体、色々な意見、逐条解説から、加入は住民の義務というより住民の権利という視点が強い、中田實教授の考えにも近い印象を受けました。
自治会・町内会だけでなくPTA、ボランティアについてもネット上の発信は、その定義や位置づけが全国共通であるかのように語られていますが、実際には定義も位置づけも人によって全く違っているし、地域によっても全然違うので、共通の問題として語るには無理があると感じましたが、ネット上でもマスメディアも、全く同じもの(景色)を見ているものとして、あーだこーだと騒いでいるように私には映りますが、他の皆さんはどうなんだろうと考える今日この頃