最近は若者、特にZ世代の中で昭和レトロ、昭和歌謡といった「昭和」が「エモい」とブームになっています。エモいとは心が揺さぶられて、何とも言えない気持ち、ノスタルジックで情緒的になることを指すらしく、言葉では伝えることのできない気持ちの高ぶりを表現したいときに使うらしいです。
一方で、
「昭和じゃないんだから」
「その考えって昭和ですよね」
など、自分の気に入らないことは、何でも「昭和」と言えば説明不要でOKみたいな風潮があるように感じていて、それも若者だけではなく、明らかに昭和生まれの中高年の人たちが「昭和じゃないんだから」って口にされたりしています。
本気なのか、冗談なのか、周囲に合わせているのか、自虐的なのか、それらすべてが混ざり合っているのか分かりませんが、面倒な説明を避けて「昭和」の一言で片づける、短絡的に物事を括ってしまうのって、何だか思考停止しているように感じてしまうのは私だけでしょうか。
短絡的と言えば、文字だけを見て、自分の不安や憤りを脊髄反射で他の誰かにぶつけているかのように感じる発信をSNSで年齢に関係なく見かけます。
リアルでも揚げ足をとる手法としてたまに見かけます
先日、会社の人事担当とヒアリングの中で、上司との会話を秘密録音する若手社員が一般化してきているという話を聴きました。
会議や打ち合わせ、あるいはカスハラ対策のため窓口などでの会話録音は日常化してきましたが、上司や先輩、執務室内の業務上の会話までもかというのが正直な感想です。
セクハラやパワハラ、不当解雇対策として録音は有効だと思うので、秘密じゃなくて公言しての録音でもいいんじゃないかと思います。
あまり時代とか世代で決めつけたくはないんですが、会社などの組織、仕事や働き方に対する意識は昭和、平成、令和と明らかに変わってきていることは40年勤めてきて実感しています。
高度経済成長時代はいわゆる「団塊の世代」が若手だったころで「企業戦士」「モーレツ社員」が流行語になったと聞きました。
そしてバブル期に若手だった私たちは、新人類、しらけ世代と呼ばれていた一方で、リゲインのテーマ、勇気のしるしが大流行し、「24時間戦えますか」がキャッチフレーズでしたが、もし今の時代に「24時間戦えますか」なんて口にしたら、その瞬間にパワハラ認定かもしれませんね。
ただバブル崩壊前は終身雇用制、年功序列制、そして毎年給料が上がるという背景があったからそういう働き方も容認されていたんだろうと思うんです。
バブルが崩壊し、それらが崩れた就職氷河期時代以降は、そんな昭和の働き方は通用しなくて、仕事優先からプライベートとの両立へ、そして仕事よりもプライベート優先へとライフプランも比重が変化してきています。
また、個人の意識が変わっただけでなく有給休暇が取りやすくなった、摂らなくてはいけない、付き合い残業や飲み会などを断っても、お酒を飲めなくても面と向かって非難されなくなったなど、実態も職場環境も良い方向に変化してきていると思います。
内心は分かりませんけど、オフィシャルで言われることはなくなってきましたね。
でも、気になってしまうのが先述した会話の録音じゃありませんが、世代や価値観が異なる人たちとのコミュニケーションです。
上司や先輩社員が、元気がないからと思って励ましの言葉をかければ「プレッシャーをかけられた。パワハラだ」と非難する
仕事のやり方について「それは違うんじゃないか」と注意すると「傷ついた」と悪者扱い
アドバイスをすると「お説教はけっこうです」と一蹴して受け止めない。
すべてではないにしても自責よりも他責思考が強すぎるように感じています。
いつの時代も年長者は若者に対して、「近ごろの若者は…」と自分たちとの違いに物足りなさやもどかしさを覚え、若者は年長者の小言を疎ましく感じるという大原則があって、それが今も、そして今後も健在ならば、年長者を疎ましく思う自分たちが中高年になった時に「最近の若者は・・・」とぼやき、若者からは「何も知らない、イマイチ使えない中高年」なんて言われるだろうことに早く気づいてねって思わないでもありません。
国の消費者白書を見ても、これから社会人になってくる・なり立てのZ世代は、消費行動が「モノ」から「コト」に変化していて、将来的な使途も「モノ」よりも思い出に残る感動的な体験が上位、そう「エモい」体験を求めていることが分かります。
また、人材育成会社が行った2,500人超えの新入社員調査では、「仕事をする上で重視したいこと」として「人や社会の役に立つ」が31.3%で最多、「上下関係は大切」や「起業や転職よりも同じ企業で長く働きたい」と考えている人が、Y世代と比較してずいぶん多いという結果が出ていることを鑑みると、Z世代はY世代よりも昭和世代に似た感覚を持っているということと受け止めれます。
トレンドに敏感であることも大切ですが、温故知新、しっかり地に足をつけて、どうして今があるのかを、人の話に耳を傾けて学ぶ、傾聴の姿勢を持つことが新しいことに繋がるんじゃないかと思いますが、それも昭和的な思考なのかなあ。
昭和はいい意味でも悪い意味でも懐かしむ、遠くにあって思うものなんでしょうかね。