「思春期における子育てアドバイス」

  小中学校のこどもさん子育て中の保護者へのメッセージ

                                   H24.4.28


1.今の子どもをめぐる問題の根っこは,「自己肯定感の極端な低さ」

  自己評価=自己肯定感,自尊感情


2.ある新聞投書から

 「思春期の子どもは同じ不安を抱きます。

  不良と呼ばれる子どもも例外ではありません。

  本人が気づいていないだけで心の片すみに不安があるんです。

  自分は必要とされているんだろうか。

  ありのままの自分を認めてくれるのだろうか。

  親がよく子どもにいう言葉がありますよね

  「となりの○○ちゃんはいい子なのに」とか。

  それって親が必要としているのは

  「できのよい子ども」ということですか。

  子どもでさえ「替え」の聞く存在なのですか。

  違うのなら気付いてください。

  子どもは救いを求めているんです。

  私たちは自分がいらない存在なんかじゃないって

  自分で納得できるほど大人じゃないんです。

  だからおねがい!

  私たちを認めてください!私たちを必要としてください!

  私たちを愛してください!」


3.今の日本の子どもたちの自己評価は高くない。


  1)自分は価値のある人間だと思う,と答えた高校生の割合

    日本 36.1%  米国 89.1%  中国 87.7%

 (H23年「高校生の心と体の健康に関する調査」日本青少年研究所)


  2)「自分は人から必要とされている」  30%

    「そう思わない」             69%

                         (H18東京都立川市内中学校)


4.子どもにとって一番大切なのは,自己評価

        勉強(6歳~)

       しつけ(3~6歳)

     自己評価(0~3歳) ←生きる力(根っこ・土台)

      私は存在価値がある  自分なんて存在価値ない

        必要な存在        いらない人間

        大切な人間        いない方がまし

        生きてていいんだ

      私は私でいいんだ


  ・「どうせ」という子

    SOSのサイン。サインに気付いてやる。

    気付いたときから,土台から育て直す。

    叱らない。


  ・叱っていい子

    自分に自信があって,前向き。

    おおらか。のんびり。こだわらない子。

  ・叱ってはいけない子,注意が必要な子

    気が小さくて,臆病

    意地っ張り。頑固。(本当はナイーブ。傷ついている子)

      →事情を聞いてから,教え,諭す。


5.どうしてそんなに自己評価が低くなるのか

  ・虐待


  ・いじめ

    →存在そのものを否定  ケア:低くなった自己評価を回復

       ×「おまえももっと強くなれ」

       ×「いじめられる理由がある」

                  ↑いじめる側が作り出したもの


  ・関わりが希薄(手のかからないいい子)

   子)ほめて欲しい・かまって欲しい

   親)手をかけない            (悪循環)

     →子)本当の自分に対しては自信が持てない

         いい子の自分しか,存在価値がない


6.子どもの心は,どのように成長するか。

 1)依存と自立の繰り返し

   あくまで子どものペースで。依存と自立を行ったり来たり。


   「依存」=「甘え」 安心 だけど 不自由(制限がある)

    (意欲)不自由なところから出てみたい    

   「自立」=「反抗」 自由 だけど 不安(ひとりぼっち,たよりない)


   ・「依存」させない関わり  放任・ネグレクト

   ・「自立」させない関わり  抑圧・否定・過干渉


   『甘えた人が自立する』・・・甘えさせないが自立ではない


   『甘えさせる』と『甘やかす』の違い

     ・甘えさせる・・・情緒的な要求にこたえる

               どうしてもできないことに対して手をかす

     ・甘やかす・・・・物質的な要求にこたえる

               自分でできることなのに,大人が手をかす


  2)してはいけないこと

     過干渉(抑圧)と放任


  3)手のひらの中の卵

    『手のひらの中の卵は,きつく握りすぎると壊れてしまう。

     手を広げすぎると,転がって地面に落ちて,

     やはり壊れてしまう。

     子どもの心も同じ』


7.思春期の対応 

  ・反抗しだしたら,一安心

    これまでの子育てがまちがってなかった。

    自立に向かってきた証拠。

    「依存」の相手が変わってくる・・・・親から友だちへ


  ・言葉遣いの悪さは,わりきる。(この時期の子には,通訳がいる)

    「うっせー,くそばばあ」→「怒ってるんだぞ!!お母さん」


8.具体的な対応

  1)話を聞く

     この時期は,話をしてこなくなる。

     また明日ということはない。

     だから,子どもが聞いて欲しいときには必ず話を聞く。


  2)ほめる

    ①できないことより,できているところに注目

    ②「できて当たり前」ではなく,「できなくて当たり前」

    ③比較するなら,以前のその子と。


   ・思春期は,子どもがほめてほしい言葉と,

    大人がほめたいことが違う


  3)子どものがんばりを認めてねぎらう

   ・がんばれ,より,がんばってるね。

      ↓

     今までのがんばりまで否定されているような気がする


  4)『ありがとう』

     相手の存在価値を高める,最高のほめ言葉


9.子どもにキレてしまうとき

    →子どもに関わっている証拠。子育てをがんばっている証拠。

  ・過度の責任感を持っている→肩の力を抜く

                     「なるようになる」「あきらめる」

  ・子どもを変えようとする(←否定のメッセージ)よりも,

   子どもが今すでに持っているいいところに注目する。


10.母親のサポート

  ・母親を責めない。

   まずここまで育ててきた労をねぎらう。

   親自身が認めてもらう。


  『子が宝なら,母もまた宝』


11.絵本『ええところ』より (先生による読みきかせ)

ええところ (絵本単品)/学研教育出版
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おわりに・・・

前日に別会場で,明橋先生の講演を聴かれたあいかさんが,

サイン会の中で,起立性調節障害のことを話されたそうです。

そして,私にも,話をされたらいいですよ~と言ってくれました。

でも,先生の飛行機の都合で,サイン会はないので,

質疑応答を受け付けますとのこと。

で・・・・,どきどきしながら・・・,

手を挙げました。

そして,

「中3(当時)の長男が,自律神経のバランスを崩す,起立性調節障害

 を発症しました。

 朝起きることができないので,学校には行くことができていません。

 一時期は,学校に行けないことで,劣等感でいっぱいになり,

 どうせ・・・というようになりました。

 そんな中,今1番何が大切なのか,先生の本を読むことで,

 気づかされ,元気をもらっていました。

 でも,時々,私の中で,本当にこれでいいのかと,揺れてしまいます。

 そんな中,こんなふうにお話を聞くことができてよかったです。

 自己肯定感,心の育ちが何より大事だということを,再認識できて,

 あ~,これでいいんだと,力をもらいました。

 でも,やっぱり,これからも,いろんな雑音を耳にして,

 揺れてしまうことがあると思います。

 その時に,先生からの「大丈夫」という言葉をいただけたら,

 これからの力になると思います。

 なので,「大丈夫」と言ってもらえないでしょうか」

なんて,ずうずうしいお願いをしました。

すると,先生はやさしく

「大丈夫ですよ」

とおっしゃってくださいました。

そして,

「この時期(4月),不登校を経験した子どもたちが,たくさん

 新しい進路の報告をしに来てくれます。

 子どもさんによって事情は,いろいろですが,

 子どもは必ず元気になっていきます。

  (略)

 お母さんが子どもさんのことをちゃんと考えてらっしゃることが

 何よりです。

 大丈夫ですよ」

思い切って,手を挙げてよかったです。

たくさん,たくさん元気と力をもらったお話でした。