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そこには後のジブリの宮崎駿監督はじめ、テレビアニメの金字塔を築いた人々のリアルドラマがありました
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ハイジが放送されたのは1974年。
ジブリ設立からさかのぼること実に11年前。
ハイジといえばこの曲ですよね。
♪「おしえて」♪
短い曲の中にダイナミックな構図でスイスの魅力が詰まったオープニング。
(本文より)
その頃、テレビアニメはまだ「テレビ漫画」と呼ばれていた。いわゆる動く漫画である。漫画本から飛び出した主人公たちは超人的な能力や努力で獲得した技で、次々と現れる「敵」と闘い続けていた。73年にはオイルショックが起こり、人類は滅亡するというノストラダムスの大予言や、小松左京のSF小説「日本沈没」が流行した。素直に未来の展望を描けず、後年、新人類ともしらけ世代とも呼ばれることになる当時の子どもたちは、どこかこの頃の悲観的な気分を共有していたようにも思う。
そこに『ハイジ』がやってきた。自然への回帰と再生、人の心の温かさと大切さを描いた『ハイジ』。児童文学を原作に、人間ドラマを展開するこの物語には、魔法も武器も超能力も登場しない。ドタバタギャグもなければ、大事件もない。等身大の人間を丁寧に描いたこの良心的なアニメは…お茶の間で大いに歓迎された。『ハイジ』はまさにこの時代に清涼な空気、お日さまの光のような作品として現れたのだ。
この本の前半の主人公は、ハイジという名作アニメを生みだした名プロデューサー、高橋茂人さん。(「ズイヨー映像社長」)
高橋さんの人生をたどりながら、関係者の証言から仕事に懸けた人々のドラマに迫ります。
高橋さんは少年時代に中国で戦争体験→日本に引き上げ→学生時代に児童文学ハイジの原作との出会い→テレビCM制作会社へ入社→テレビアニメ「ハイジ」プロデューサーへ、という経歴のお方。
CM会社で培った経験と人脈がアニメ作品の企画・プロデュースの土台となったといいます。
若き日の宮崎駿監督と故高畑勲監督のお名前も。。。
アルプスの少女ハイジ主要スタッフ
プロデューサー:高橋茂人
音楽:渡辺岳夫
場面設定・画面構成:宮崎駿
キャラクターデザイン・作画監督:小田部羊一
演出:高畑勲
美術監督:井岡雅弘
スタッフは制作にあたりスイスでロケハンを敢行したことでも有名です。それはこの作品を赤字覚悟でも、海外で評価されるような良質の作品として世に出したいと考えていた高橋さんの思いでした。その時の様子もとても詳しく書かれています。(ロケハン参加は、高畑・小田部・宮崎・中島の4名。作曲家の渡辺岳夫さんも仕事の合間をぬって参加、日本で多忙の為ボロボロの状態だったがスイスの自然に生き返った心を取り戻したようだったと振り返る。ハイジの主題歌・挿入歌の数々はここで誕生する)
高橋さんの願い叶って、後にヨーロッパでも人気となったアニメハイジですが、最初はその風景描写の正確さのせいか、日本で作られたものだと思う人はほとんどいなかったといいます。
この本には、当時のムーミン、どろろ、(初期の)ルパン、サザエさん、鉄人28号、アトム、エイトマン、ロッキーチャック、ヤマト…。懐かしいアニメの名前も裏話的なエピソードもたくさん出てきます。(余談ですが、なんと、ハイジの裏番組はヤマトだったんですよ)
日本アニメの豊かな土壌にはこういう人々の熱い想いがあって、それが脈々と受け継がれてきたというわけですね。
ちなみにその他の各担当者を簡単にご紹介。
今あらためて見返してみると、豪華
音楽:渡辺岳夫
(昭和のテレビ音楽界で一時代を築いた人物・作曲家)
主題歌作詞:岸田衿子
(女優岸田今日子の姉・作詞家)
オープニング主題歌「おしえて」歌手:伊集加代子(現 伊集加代)
(日本を代表するコーラスグループの歌手・『11PM』テーマ曲、『ルパン三世』『タッチ』などのコーラス)
エンディング曲「まっててごらん」歌手:大杉久美子
(『アタックNo.1』『母をたずねて三千里』『あらいぐまラスカル』、『ドラえもん』初代主題歌)
美術監督の井岡雅弘さんに関しては以前ブログに書きました。
◆赤毛のアンやハイジのいた風景☆井岡雅弘画集☆アニメ背景美術に尽力した天才画家
さて、それではハイジからジブリへの系譜としてまとめです。
詳しくは本を読んでみてくださいね♡
ハイジ後に高畑勲、宮崎駿は「赤毛のアン」制作に関わった後、数年後にスタジオジブリを設立。ハイジで絵コンテ担当の富野喜幸は「ガンダム」、宮崎の仕事に学んだ庵野秀明は「エバンゲリオン」、キャラクターデザインの小田部羊一は任天堂に移籍し「ポケモン」「スーパーマリオブラザーズ」などのアニメーション監修へと活動の場を広げました。ハイジに影響を受けた黒川文男は「小公女セーラ」「愛の若草物語」で監督。
高畑、宮崎らの取り組んだリアリズムの流れはジブリによって受け継がれ、日本のアニメ映画を、芸術・文化の域まで引き上げ、その波は「サマーウォーズ」「おおかみこどもの雨と雪」の細田守、「君の名は」の新海誠、「この世界の片隅に」の片渕須直などの気鋭の次世代へと受け継がれているのです
晩年、ハイジ制作後の高橋さんの人生は大きく転換していき、事故により思いがけず車椅子を必要とする身体となります。
高橋さんをはじめ、ハイジ制作に心血を注いだ人達は、その後の日本のアニメ界の中核となり、今現在日本が世界に誇るアニメを作り出していくことになるのです。
この本はその歴史、そして高橋さんの人生が詰まった素晴らしい本です。
アニメや当時の資料など写真(モノクロ)も豊富に掲載されています。
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皆さまもどうぞステキな読書の時間を
最後までご覧いただきありがとうございました。
いつも感謝です