もう35年近く前のお話です。
僕もまだ20代後半、大阪市内にある賃貸マンションで一人暮らしをしていました。
近くには○○新地なんて呼ばれる、かつては娼館街だったところもあり、あまり柄のいい土地柄ではありません。
でもその分、市内にしては家賃も安く、リーズナブルな呑み屋さんや、落ち着ける喫茶店なんかもあって、独身生活を満喫していました。
ある日、仕事から帰ってきてエレベーターで自室のある5階へ。
扉が開いて降りようとした瞬間、突然足が突き出され、通せんぼされてしまいました。
周りを見ると、数人の男が僕を取り囲むように立っています。
みんな黒っぽい服装をしていました。
一番年かさだと思われる男がじっと僕の顔を見た後、他のやつらに向かって首を横に振ります。
すると目の前の足は下ろされ、みんな僕に顔を見せないように向きを変えました。
ドスの効いた「どうぞ」という言葉に促されるように自室へ向かいます。
そのときに見たんですよ。
斜向かいの部屋のドアが男たちに蹴り上げられてボコボコのへこんでいるのを。
そしてマジックで書かれたのか、大きな「金返せ」の文字。
もう、振り向きもせず自室に飛び込み中から鍵をかけました。
取立て?
ヤクザか闇金か知らないけれど、初めて見ました。
ていうか、こんな経験はこの時限りです。
何が起こるかわかりませんから、その日は酒かっくらって早々にベッドに潜り込みました。
実はね、そのときは僕も若かったし、武道の経験もあったものだから、足を突き出されたときはムッとしたんですよ。
よかったあ、何もしないで。
あんなに人数いるとは思わなかった。
もし何かしていたら確実にボコられていたでしょうね。
下手したら殺されていたかもしれません。
けっきょくその部屋の人はそのあと帰ってくることも無く、へこんだドアもいつの間にやら新しいのに交換されていたのでした。
あ~、怖かった。
「難波金融伝 ミナミの帝王」を見るたびに思い出します。
そういえば「れいわ新撰組」の山本太郎もでてたな、このVシネマ。