さて改めて三重塔です。
ここの七不思議というのは垂木なんですよ。
垂木というのは棟から軒にかけて渡して屋根を下から支える役割の建築部材。
この三重塔の一階、二階部分の屋根下がこちら。
垂木が等間隔に並んでいるでしょう。
これは平行垂木と呼ばれるもので、現在の住宅でもよく使われる構造。
そしてこちらが三階部分。
垂木が放射線状になっています。
これは扇垂木と呼ばれるもので、鎌倉時代までは寄棟の屋根でよく使われてきましたが、現在では社寺建築でしか使われていません。
乱暴に言ってしまうと平行垂木は施工は簡単だが、寄棟部分の強度が弱い。
扇垂木は逆に施工が複雑になってしまうけれど全体で屋根の重みを支えられるので強度的には優れている。
といった違いがあるみたいです。
なぜこのようなことになってしまったのかはわからないそうですが、道成寺のHPにはこれに関する民話が記されていました。
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ノミで死んだ棟梁
この塔には特徴があり、一、二階の屋根は平行垂木(へいこうだるき)で、三階は扇垂木(おうぎだるき)で支えられています。平行垂木は一般的な工法で、扇垂木は美しい反面、一本一本の垂木の形が違う、複雑な工法です。
これについて、不思議な民話が残っています。
三重塔を再建していた棟梁さんが、二階まで組み上げて、下に降りて休憩していたそうです。すると、一人の巡礼が通りかかり、話しかけました。
「棟梁や、扇垂木って知ってるか?もっと美しい塔にできる方法があるぞ」棟梁は、巡礼の言う通りに三階を扇垂木にしてみると、見映えが一層良くなりました。「ああ、一階も二階も扇垂木こうしとけば良かった。わしも素人に教わるようでは…」と後悔して、完成後に、三階から鋭いノミを口にくわえて飛び降り自殺をしてしいました。
いくつかの本にも載っている民話で、話としては面白いのですが、そんな事実はありません。おそらく、晩酌が過ぎて「飲み」で命を落としたのでしょう。
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道成寺HPより
三重塔の奥には書院が。
紀州藩の寄進で建てられた建物で、迎賓館として利用されていたようです。
毎年春には一般公開されているようですね。
残念ながらこの時は中に入ることはできませんでした。
こちらは念仏堂
昔は阿弥陀如来をお祀りしたお堂だったそうですが、2005年に再建され、今は檀家さんの納骨堂として使用されているようです。
念仏堂の前がちょうど本堂の裏側。
このちょうど真ん中あたりに北向き本尊の拝所が設けられていました。
こちらは護摩堂。
なかなか面白い構造です。
お堂全体が低い屋根の上になっているようなイメージなのかな。
そして絵馬奉納所
中には鎮守三社がお祀りされていました。
左から住吉様、弁天様、天満様の順。
こちらの小さなお社はお稲荷様なんですよ。
ぱっと見はお稲荷様だってわかりません。
中を覗くとお狐様が鎮座されていました。
その横には大きな塔が。
脇の灯篭には「明治風水難供養塔」とかかれてあります。
ただ、具体的に何を対象とした供養塔なのかはわかりません。
そしてその横に建つのが宝物殿です。
国宝であるご本尊もここに安置されています。
続きで縁起堂があり、そこで安珍清姫物語の絵解き説法を聞くことができるんですよ。
宝物殿、縁起堂は拝観料が必要ですが、境内を見て回るだけなら無料。
それでも十分に見ごたえのあるお寺だと思います。