山の写真(294):名工のピッケル『秋田・森谷』訂正、『秋田・モリヤ』! | 信州:大町・安曇野便り

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日本三大ピッケル製造の一翼を担った、秋田の『モリヤ製作所』を、

われわれ山仲間は制作者の苗字『森谷』姓を漢字、そのままを使い、

長年『森谷製作所』としてきていました。

 

しかし2021年2月21日、初代一郎氏の令孫であられる森谷 岳寿から、

創業当初から『モリヤ製作所』であることをご教示頂き、

またお送り頂いた昭和28年当時の写真には正しく、

『モリヤ製作所』の看板が掲げられておりました。

長年の誤りを、ここに訂正させて頂き、陳謝する次第です。

 

以下、「森谷」と明記していた部分を、全て「モリヤ」に訂正させて頂きます。

名工、『秋田・モリヤ』のピッケル。

 

『仙台・山内(やまのうち)』、『札幌・門田(かどた)』と共に、

日本を代表する、つまり日本三大ピッケルの一つ。

 

 

 

 

 

昭和27年(1952)、秋田の学生・吉川信市氏が、良質で安価なピッケルをと、

市内の鍛冶屋を訪ね歩き、初めの2軒にはあっさり断られましたが、

3軒目に訪ねた「モリヤ製作所」で、ピッケル製造の承諾を得ました。

 

注:昭和27年が“通説”になっていましたが、岳寿氏によると、

昭和26年12月10日がモリヤピッケルの記念すべき初納付の日、との由。

 

吉川氏は森谷一郎氏に国内外のピッケルの現物、写真、採寸図等を提示され、

それを参考に試作を重ね、打ち上げ、12月10日に吉川氏に納付したということは、

その数か月前に吉川氏が依頼したということでしょう。

 

 

 


吉川氏からの依頼を受けピッケルを造り始めたのは森谷一郎氏、48 歳の時。

長男昭一氏も共に働いていて、作業はお二人で分担してピッケルを造り始めました。

(楕円の銘の中の「C 2336」のCは炭素鋼、2336は製造番号を表す)

 

注:岳寿氏により、製造番号から判断して、昭和35年頃製造の物と判明しました。

 

 

 

 

 

『秋田:モリヤ』のピッケルは昭和31年(1956)マナスル遠征をはじめ、

昭和35年(1960)南極越冬隊、その他の遠征に使用されました。

 

マナスル遠征隊の隊長・槇 有恒氏からは、

「ピッケルに故障はなかった。おかげでマナスルを征服し、

山頂にあなたの造ったピッケルを立てた」と感謝の手紙が送られてきたり、

南極越冬隊・西堀榮三郎隊長は帰国後、秋田に森谷氏を訪ね、

ピッケルの礼を言いに来たほどでした。

 

一郎氏は70歳過ぎにピッケル造りから引退しましたが、

昭和38年(1963)、秋田市から文化功労者の表彰を受けました。

 

尚、首都圏では北千住の登山用具店・駒草山荘などが販売を行いました。

 

(上記文章は、主にHP「小さな山道具館」から引用させて頂きました)

 

 

 

 

 

 

ケラ首、2.5cm

 

 

 

 

木目が綺麗です。

 

はい、亜麻仁油を塗っています。

 

 

 

 

フィンガー、16cm・3点留め。

 

 

 

 

ブレードは銀杏形。

 

 

 

そしてほぼ、フラット。

 

 

 

ヘッドは薄く感じます。

 

 

 

 

ハーネス、シュピッツェ ともに6cm。

 

 

 

 

 

ハーネスは普通マイナス・ネジで留められていますが、

その打ち跡が見えません。

 

 

 

 

 

                         重 量:875g

                         全 長:83cm

                         ヘッド:30cm

                         ケラ首:2.5cm

                         フィンガー:16cm・3点留め

                         ブレード:6cm・銀杏型

                         ハーネス:6cm

                         シュピッツェ:6cm

 

 

 

 

 

ピッケルは、よく日本刀に例えられます。

 

日本刀のように、ひとつの塊から打っていきます。

そしてこのような特異な形に叩き出します。

 

 

 

 

武士の魂、日本刀には及びませんが、

ピッケルは、やはり雪山に登る人の命を守るもの。

 

 

 

 

日頃の手入れは当然でしょう。

 

 

 

 

実は6本の、「ヴィンテージ・ウッド・シャフト・ピッケル」を所持していますが、

偶々「ヤフオク」で、この『秋田・モリヤ』が出品されていたのを見ました。

 

『秋田・モリヤ』を手にすることは生涯、まず無い、と思っていました。

それが「ヤフオク」に出品され、最後まで残って運よく落札することが出来ました。

 

貴重な一本です。

 

 

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