彼女はこの学校唯一の報道部員であり、自らの好奇心という満たせぬ器の空白を、何とか埋めようと年中駆け回っている。多少の敵がいるようだが、性格は良く、着々と人脈を伸ばしているようだ。

「私に聞くよりも、本人に直接訪ねたほうがいいんじゃない?」
「それもそうだが…赤の他人に対して、いきなり話しかけるのは……抵抗がある」
「そこら辺の図々しさは無いわけだ…まあ、私がいえることは」椅子を机と垂直になるように滑らせ、少し手振りを加えながら松村は話し始めた。

「彼、篠部浩平は、一見波風も立たない穏やかさを含んだ、絶えず笑顔を絶やさない菩薩のような人。でも、部活とか、そういう類のガードは恐ろしく堅いみたい。理由はあるだろうけど、残念ながらそこまでは詮索できないわ。この高校に旧知の仲はいないようだし、この学校でも友達と呼べる親しい中は不思議といないみたいね。自分で壁を作っているっていうか、人間関係に不気味なほど疎いというかな。……そんなわけで、一筋縄にはいか無い相手よ。強引な勧誘で有名な、とある体育会系があの手この手を使っても、遂に陥落しなかった浮沈艦なんだもの」

「…まあ、少し会話すれば、可能性の有無くらい判断できるだろう」

神堂は自身の弁当箱を片付け、片手に空同然のペットボトルを携えて席を立とうとした。

「待って!」途端に声が弾けた。振り向くと、松村が立ち上がり、上品な笑みを湛えていた。

「私もいくわ。報道部として、体育祭のMVPには非常に興味があります。なあに、やましい心なんて持ってない。ちょっと、他人に言えないような秘密を暴けたらな、なんて思っているだけですよ」

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一ヶ月かけて日刊新聞の編集後記以下の量しかあげられない奴がいるらしい

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今度から何倍かの量にしていきます

あと、ここで書いているのは下書きです。

完成したものはHPにアップしていきます。そちらにも是非いらしてください。

六月二日、快晴

 うだるような暑さの上に、梅雨特有の湿気が多いじめじめとした気候の中、学校に行くことさえ憚られるように感じられるが、着いてしまえば、教室はエアコンが利いているために、案外快適に過ごせるものである。

 現在の時刻は12時四十六分。昼休み。男たちは昼休みを最大限使うために、短い休み時間の合間に弁当を食べ、アスファルトの匂いが鼻に付く外へ身を投じていく。しかし、余程元気が有り余っているのではない限り、快適な空間をわざわざ捨てる道理はない。大部分の学生たちは教室に残ってトランプなどのゲームに興じたり、楽しく弁当を食したりしていた。

神堂真奈もその一人であり、他の女子と一緒に教室の一角を陣取ってお昼休みを満喫していた。

「そういえば」

氷野囲美沙子、秋田恵佐と特に仲のいい女子と、楽しげに会話している松村茜に、真奈は思い出したように話しかけた。

「この前の体育祭で、C組にすごい人、いたじゃないか? あれって結局誰だったんだ?」
「あれえー?」
 松村は意地が悪そうに笑った。
「もしかして気があるとか?」
 その言葉を聞いたとたん、今までお喋りしていた女子たちが一気に静まり、そしてまた騒然となる。
「ええー、だれだれ?」
「うーむ、まさかマナマナにそんな感情が…」
「やっぱ何? 格闘技娘は強い男に惹かれるとか?」
 恋愛の話題になると、この大人数を収束する方法は少ない。神堂は机を、少し手に力を加えて叩きつけた。

 周りはしゅん、と静かになり、こちらに注目する。あれだけ人の話題をしておいて、彼女たちは全く神堂を見ていないのだ。話がし易い状況を作って、周りを威嚇するようにじろっと一周、視線を走らせ、説明する。

「好き、嫌いの話じゃない。あれだけの身体能力を持っていて、体育会系の部活では顔を見たことが無い。文化系ならば、あのフィジカルを生かさないては無いだろう。是非格闘部へ誘ってみようと思ったわけだ、松村」

 神堂は松村を睨み付けた。松村は全く怯まない。

「知っていることを教えてくれ。どうせ、もう粗方調べ上げたんだろう」

 松村はにっと笑って、髪を上品そうにかき上げた。

まあ、そんなことはどうでもいいんだ。最近では、あまりにも妖魔の血が薄くなって、化け物じみた能力を使えるもの自体が少なくなってきている。うちだって、母方の祖母と父方の祖父が能力を持っていただけで、他の親戚はせいぜい「少し運動能力に優れている人間」どまり。妖魔よりも人間に近い方々だったんだ。元々劣性遺伝子なのかな、世代を重ねるごとに化け物は少なくなっていく。いつかは完全に消滅するってのが専らの噂だ。攻撃型は絶滅し、愛玩型は何とか生き残り、僕たちもいずれは消滅する。それは運命として半ばあきらめていたんだ。

 あいつらの生物学的な勝利は確実に思われた数十年前、奴らは我々に真っ向勝負を仕掛けてきた。

 まあ、それはどうだっていいんだ。どっちみち滅びるならそれでもいいさ。僕は人間には負けない自信があったし、結局強い奴らは人間に負けるはずは無いんだな。弱いものが朽ち、強いものが生き残る。自然の摂理をささやかながら、奴らが手助けしただけの話だったんだな。

 しかし、ここで不測の事態が起きた。僕たちは奴らは目に見えて凶暴なやつを駆除するために行動していたと思っていた。しかし、それは大きな間違いだった。やつらの本当の目的は僕たち、つまり「人間に妖魔の汚らわしい血を産みつけ、増え続ける」種の根絶を第一目標にしていたんだな。どういうことかって? 奴らは僕の家族、中途半端な人間族を皆殺しにしたのさ。

 いやあ、本当に腹がたつねえ、無力な奴らを先に殺していく、まさに小物、弱者の考え方。反吐が出るよ、まったく。

 ということで、僕の家族は、祖母と僕だけになった。ばあちゃんは偶然(?)旅行に出かけている最中で、奴らの突入の際に家に居なかったんだな。でも、そのことに対しては本当に悔しがってた。私さえいれば、返り討ちにできたのに、だってさ。確かにばあちゃんの力を持ってすればそれは可能だっただろう。でもそれは間違っていると思う。そんなことしたら、僕たちの正体が家族にばれて、家にいれなくなっていただろうからねえ。僕たちにとってはどっちにしても家族を失うほかなかったんだ。ちなみに祖父は彼らの手によっていなくなったわけじゃない。数十年前にどっかにいっちまったからね。

 不幸中の幸いで、僕たちは家族を、家族として失うことになった。でも、本当に恨んでんだぜ? 実際彼らはいい人たちだったからねえ。それに人間同士の殺しあい、しかも醜い人が他の人を殺すなんて見るに耐えないことだしね。

 僕は友達数人と復讐することにした。復讐と言っても、刺し違えてでも、みたいな柳生忍法帖的使命を持ったわけじゃあない。ただ、醜い奴らを成敗するのさ。奴らが僕らにしているようにね。