猫は(人間のような言葉では)何も言わないけれど、実はいろいろなことを考えているのでは

ないかと思うような面構えをしている。そりゃ、お腹がすいている時には「にゃおにゃお」とすさまじい声を上げるし、甘ったれた「ニャーオウ~」という声も出す。でも大抵は黙っている。

 

 

黙っている時には賢そうに見えたり、イジワルそうに見えたり、何か企んでいるようで妖しげに見えたりする。その瞳でじっとどこかをみつめていると、こちらもハッとする。猫ビームが飛んでくる!

 

 

かと思うと、あの静かなはっかが突然ものを掴んで立ち上がったりするから、驚く。何だろうと思って覗いてみると、小さな犬のパペットだった。「なんだ、はっかちゃんもお人形で遊ぶのね」と拍子抜けするが、とてもまじめそうに遊ぶから面白い。(へっぴり腰!)

 

 

二匹は語り合っているわけではないのだけれど、テーブルの上で一本の鉛筆を前に難しそうな顔で向かい合っていると、ちょっとしたしぐさが意味ありげに見えてくる。「にっきちゃん、これかじっちゃだめよ」「ころころするとたのしいよ」「あたしがさきにみつけたの!」「そなの?」

 

 

人間が食事の後片付けに手間取っていると、猫たちは遠慮なくランチョンマットを座布団にする。「にっきちゃん、そこだめよ」と言っても、「ねこ、にんげんのことばわかりませ~ん」といった顔でどきゃしない。

 

 

「はっかちゃん、おざぶとんかえしてね。かわりにこれどうぞ」と新聞広告を置くと、感心なはっかは「ないよりましね」とばかり、よっこら紙の上に座る。やはり猫でも(猫だから?)敷くもの

があった方が居心地がよいのだろう。

 

 

猫のお化粧は念入りだ。自分の手を舐めて顔をふく。何度でも繰り返す。その仕草が「いや~まいったまいった。はっかちゃんにいいばしょとられちゃった。うっかりしてたわ」とでもいうように見えるから愉快だ。猫にその気はさらさらなくても。

 

 

人間の思惑とはかかわりなく、猫はたいてい勝手に眠っている。あれだけ寝たら気分もよかろう。人間も好きなだけ眠れたら、気持ちいいだろうな。猫の眠りのおこぼれに与りたいかも。

 

 

しかも二匹は並んだ椅子に同じような格好で伸びたり丸まったりしている。その気ままさときたら、感心するくらい自由だ。

 

 

毎日同じような格好で、同じ場所で、二匹はくっついて眠る。猫ベッドにみっちりはまって、一緒にいると安心なのだろう。それを眺める人間も安心して眠くなってくる。猫たちが平和に暮らしていると、その安寧ぶりが人間にも伝わってくる。