人間が朝一番に階段を下りてくると猫たちは「まってた、まってた、はやく、はやく、はらぺこだ!」とみゃーみゃー大騒ぎでお待ちかね。人間が餌を計って器をケージの定位置に運ぶのももどかしく、猫たちはカリカリカと夢中で餌を平らげる...はずなのに、今朝は二匹ともほとんど食べずに残した。「えっ、どうした?」と人間は青ざめた。

 

 

夜中に何か変なものでも食べて具合が悪いのか、急病か、人間は居間の中を痕跡を求めて探し回った。特に吐き戻した様子もないし、ゴミがぶちまけられているというようなこともない。変だ変だ。一体どうしたんだろう?人間は途方に暮れた。と、その時、納戸の扉が少し開いているのに気付いた。さては!

 

 

重い木の引き戸を開けたら、昨日納戸の箱の中にしまった餌の大きな袋に穴が開いているのを発見。ひっぱりあげてみると、猫がかじってあけた穴が。なんと、二匹はこのストックを見つけて勝手に思う存分食べたらしい。そりゃ、もうおなかがいっぱいなわけだ。しかし猫がこの重たい引き戸を開けたのか!

 

 

納戸が狙われたのには訳がある。昨日人間シニアの友人から大箱二つに、たくさん猫砂やおしっこシート、おやつなどが届いた。友人宅のお年寄り猫が先ごろとうとう天国に行ってしまい、不要になった品々をわが家に送ってくれたのだ。シニアはごちゃごちゃしていた納戸の中を片付け、頂き物を収納するついでに、いつもの猫の餌も改めて納戸の一角にしまった。にっきとはっかはそれをじっと見ていた。そして餌袋をクンクン嗅いでいた。しかし、よもや二匹が納戸に忍び込んで、しかもクリップで止めた開け口には目もくれず、袋の本体をかじって破るとは!

 

 

隙あり、人間。猫の手はその気になれば扉をこじ開けるし、猫の歯は袋も食いちぎる。二匹が一体どれくらい食べたのかは知る由もないが、少なくとも朝食をパスして一向構わないくらい腹いっぱい食べたのは明らかだった。深窓の令嬢猫が聞いてあきれる。今日からは引き戸にストッパーをかけることにしよう。

 

 

いざとなると猫は何でもやっちゃうのだ。修行が足りない人間だった。まあ、毒を食らったわけではないし、外に飛び出したわけでもないのを幸いとしておこう。「どうしたの?なにかあった?」みたいな涼しい顔のはっかである。

 

 

ベッドからはみ出しそうになって眠るはっかをしっかり抱えるにっき。悪いのは猫じゃない。後から「ダメじゃない!」と叱っても猫には何のことやら分からない。そして猫の潜在能力は決して侮れない。(ベテランさんたちには自明のことが、猫と暮らす初心者にはまだわかっていなかった。大反省である。)

 

 

二匹とも満足して丸まって眠る。世はすべて何事もなし。

 

 

あっけにとられて肝をつぶしたのは人間たちだけだった。やられた~。