限られた居住空間の中で安心できる場所を確保するのは、猫たちにとって重要な問題なのだろう。たったの二匹でも争奪戦を繰り広げるのは、生存競争みたいなものかも知れない。半分は遊び、半分は真剣勝負の雰囲気が漂う。食事をねだる時は二匹とも甘ったれた哀れな声でコーラスする。「わかった、わかった、今あげる」と人間は簡単に籠絡される。夢中で食べて、お腹がくちくなると、猫たちは居眠りの場所を探す。はっかは大体決まったところへ行くが、にっきはあっちもこっちも試してから、その日の気分で場所取りをする。

 

「いいかげんにしてね」

 

はっかが悠然と座り込んだところへ、にっきが「そこいいかもしれない、私も座る」と追いかけて邪魔する。はっかが移動するとまたそこへ行き、「やっぱりこっちね」と横入りする。はっかはうるさそうにまた別の場所へ。今朝はひとっ飛びで食器棚の上に逃走。すると、あろうことかにっきがはっかを追って自分も食器戸棚の上へ飛び乗った。はっかはすぐに飛び降りた。よほど一匹になりたかったようだ。

 

「来ないで」

 

ジャンプして降りた低い整理ダンスの上で、はっかは「いいかげんにしなさいね」の表情(と人間には見える)で寝そべる。高い棚の上から様子を見ているにっき。とりあえずはこれで決着かと思えたが、にっきもさっさと食器戸棚から降りてきた。さすがにはっかのそばへは寄れなくて、いつもはっかが占領している猫型爪研ぎに収まった。それを寝そべっているタンスの上からじっと見下ろすはっか。「そこ、とったのね」と思っているのかどうか。

 

「あら、そことったの?」

 

はっかに追い払われたときは、よく椅子の下で首をすくめているにっきだけれど、時々威勢良く跳ね回って本日のような仕儀に至る。はっかの後ろからそっと様子を伺うにっきも、大胆不敵なにっきも、はっかにとっては「しょうのない子ね」というところか。これがオス猫同士だったら闘争はこんなものではなかろう。我が家の二匹の猫娘たちは心理戦で勝負。

 

  

いつもははっかが爪とぎに                              首をすくめるにっき