猫たちは魚の匂いに驚くほど敏感だ。人間が夕食に鮭の切り身を焼く、ムニエルをこしらえる、サンマの蒲焼を温める、などということをしようものなら、すわっと寄ってくる。何度台所から追い出しても懲りずに近付く。ホカホカの匂い立つ魚料理を前に人間が食事を始めると、目をらんらんと輝かせて「お相伴に与ります」の顔をする。「猫に塩辛い魚なんか毒なのよ」と言って分かるはずもないが、本能が疼いているのが見え見えだ。(カリカリ餌にも魚フレーバーが付いているのだろう。「知ってます、その匂い!」と言いたげな瞳だ。)

 

台所のマットに陣取るにっき

 

食卓に肉料理が出ていても、野菜の煮付けがよそってあっても猫たちは見向きもしないのに、魚には特別な磁力があるらしい。もちろん一切れたりとも分けてやる気はないが、余りにも熱烈な「美味しそうですね。食べたいです」アピールには参る。人間はそそくさと自分の魚を食べ終えて、その皿だけ先に洗ってしまう。匂いの痕跡を消し、猫の凝視を逸らすために。

 

   

紙袋に飛び込んだはっか。にっきも入りたいが手提げの紐に阻まれる

 

そういえば、これまでのところ魚に次いで猫の嗅覚に激しく訴えるのはヤキトリだった。買い物袋から既に匂っていたらしい。にっきが飛んできてくんくんする。はっかもむっくりと起き上がる。同じ空間で別々の食事をせざるを得ない猫と人間の宿命だろう。攻防は果てしなく続く。(♪お魚くわえたどら猫、追いかけて、はだしでかけてく陽気なサザエさん~というあのテーマソングを思い出す。リアルな歌詞だ!)