人間の政府は国民から資金供給を受けており,そのほとんどは大抵の場合,租税や関税によるものです。
そのようにお金が流入するため,役人の中には,着服しようとする人も現われます。
また,政府への税金その他の支払いの減額を望む人からわいろを受け取って不正を働く役人もいます。
その結果,悪循環になる場合があります。
政府が汚職による損失を埋め合わせるために増税すると,それがまた汚職を助長するのです。
そのような環境下で特に苦しむのは,往々にして,正直な人たちです。



多くの国では定期的に選挙が行なわれています。
それにより,理論上は,腐敗した役人を再選しないようにすることができます。
しかし現実には,いわゆる先進国においてさえ,選挙とそのための運動は腐敗したものになりがちです。
お金持ちが選挙運動への寄付その他の活動によって,公職に就いている人や就こうとする人に不当な影響を及ぼす場合があるのです。



米国最高裁判所のジョン・ポール・スティーブンズ判事は,そのような影響力が「政府の正当性や質だけでなく,政府に対する国民の信頼をも」脅かしている,と書いています。
ですから,最も腐敗しているのは政党だ,と考える人が世界中に大勢いるのも,不思議ではありません。

最初のうちは,新しい法律を制定すれば事態は良くなると思えるかもしれません。
しかし,専門家たちは,法律の数を増やすと,多くの場合,贈収賄の機会を増やすだけであることに気づきました。
しかも,贈収賄を減らすことを特に意図した法律は,大抵の場合,実施に多額の経費がかかり,成果はほとんど上がらないのです。



政府の腐敗とは,公的な権力を乱用して私的な利益を得ること,とされている。
そのような職権乱用には長い歴史がある。
例えば訴訟事件に関連したわいろを禁じる律法が記録されていて,贈収賄は早くも3,500年以上前からよく知られていたことが分かる。
もちろん,腐敗にはわいろを受ける以外のことも含まれる。
腐敗した公務員は,官庁の物を私物化したり,受ける権利のないサービスを利用したり,さらには公金を横領したりすることがある。また,自分の地位を利用して不正に友人や親族を優遇する場合もあるという。



腐敗は人間のどんな組織にもあり得るが,最も広く見られるのは政府の腐敗である。
トランスペアレンシー・インターナショナル発行の2013年「世界腐敗バロメーター」によると,多くの国の人々は,公職の次の5つの分野が,すなわち党員,警察官,官僚,議員,裁判官が特に腐敗していると考えている。



政府の腐敗には根深いものがある。腐敗防止策に関する専門家スーザン・ローズ‐アッカーマン教授は,改革するには「政府の務めの果たし方を抜本的に変革する」必要がある,と記す。その変革は,必ず起きると信じている。




アフリカ:
2013年,南アフリカの約2万2,000人の役人が,職権を乱用したとして訴えられた。



南アメリカ
2012年,ブラジルで,25人が公的資金を使って政治的支援を得たことで有罪判決を受けた。それら有罪とされた人たちの中には,同国の最高権力者に次ぐ,大統領の元首席補佐官も含まれていた。



アジア:
韓国のソウルでは,1995年に,あるデパートが崩壊して502人が死亡した。調査の結果,市の役人たちがわいろを受け取って,建設業者が基準以下のコンクリートを使ったり安全規定に違反したりするのを許していたことが明らかになった。



ヨーロッパ:
欧州委員会内務総局の委員セシリア・マルムストロームは,「この問題[ヨーロッパにおける腐敗]の程度は,驚くほど深刻である」とし,「腐敗を本当に根絶しようとする政治的意欲が欠けているように思われる」とも述べている。