NMO処方サーベイ
三環系抗うつ薬◇第6回調査
三環系抗うつ薬、アミトリプチリン人気変わらず
第2位はアモキサピン、
第3位はクロミプラミン、
第4位はイミプラミン
2024/04/20
日経メディカル Onlineの医師会員を対象に、三環系抗うつ薬のうち最も処方頻度の高いものを聞いたところ、57.5%の医師がアミトリプチリン塩酸塩(商品名トリプタノール他)と回答した。
第2位のアモキサピン(アモキサン)は13.4%、第3位のクロミプラミン塩酸塩(アナフラニール)は12.4%、第4位のイミプラミン塩酸塩(イミドール、トフラニール)は11.3%の医師が、最も処方頻度の高い薬剤として選んだ。なお、アモキサピンは2023年2月より出荷停止および回収となっている。
図1 日経メディカル Onlineの医師会員が最もよく処方する三環系抗うつ薬(有効回答数8140人から処方経験のない4393人を除いて作成)
図には示していないが、5位以下は次の通り。
5位 ドスレピン塩酸塩(プロチアデン) 2.2%
6位 ノルトリプチリン塩酸塩(ノリトレン) 1.7%
7位 トリミプラミンマレイン酸塩(スルモンチール) 0.9%
8位 ロフェプラミン塩酸塩(アンプリット) 0.6%
三環系抗うつ剤を使う機会が減ってきているためか、過去の調査から順位に大きな変化は見られなかった。(第1回調査(2015年11月)、第2回調査(2017年8月)、第3回調査(2019年3月)、第4回調査(2020年11月)、第5回調査(2022年7月))
【調査概要】 日経メディカル Online の医師会員を対象にウェブアンケートを実施。期間は2024年4月6日~12日。有効回答数は8140人。内訳は病院勤務医5896人、診療所勤務医1122人、開業医896人、その他226人。
第1位のアミトリプチリン塩酸塩を処方する理由
(トリプタノール他)
・心療内科で慢性痛関連の疾患を見ることが多いためアミトリプチリンは頻用している。抗うつ薬としてもSSRIなどで効果が今ひとつの症例に著効するなど、まだまだ必要な薬剤と感じている。(30歳代病院勤務医、心療内科)
・アミトリプチリンは副作用が強いが、切れ味は一番。少量を上手に使っている。(60歳代病院勤務医、上記以外の診療科)
・副作用が多いため、三環系は最近はほとんど使わない。疼痛に対して使うことがあるくらい。(50歳代病院勤務医、精神科)
・うつ病以外にも神経因性疼痛に処方することがある。昔からある薬で使いやすい。(60歳代病院勤務医、脳神経内科)
第2位のアモキサピンを処方する理由
(アモキサン)
・製造中止になって大変困っている。(60歳代病院勤務医、精神科)
第3位のクロミプラミン塩酸塩を処方する理由
(アナフラニール)
・使う機会自体は少なくなったが、重症の内因性うつ病に対して使用することはある。(50歳代病院勤務医、精神科)
・効果が強いが副作用も強い。昏迷状態で経口投与が困難な場合、点滴の選択肢があるのがよい。(30歳代病院勤務医、精神科)
・ナルコレプシーの情動脱力発作や悪夢に対する処方など処方範囲が広い。(30歳代病院勤務医、精神科)
第4位のイミプラミン塩酸塩を処方する理由
(イミドール、トフラニール)
・昔から使い慣れていて、今まで大きな副作用の経験もなく処方しやすいと思う。(30歳代病院勤務医、腎臓内科)
・夜尿症に対して、まれに使用することがある。(50歳代病院勤務医、小児科)
・使い慣れているが、最近は新しいSSRIなどを使っている。(50歳代病院勤務医、脳神経外科)
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今回は、三環系抗うつ薬の医師人気ランキングという面白い企画でしたが、悲しいかな、そのうち、
- アモキサン(②位)
- プロチアデン(⑤位)
- ノリトレン(⑥位)
- アンプリット(⑧位)
は製造中止ですし、
- トフラニール(④位)
は自主回収で出荷停止となり、堂々1位の
- トリプタノール
は生産力低下(なにそれ?)で限定出荷という惨憺たる状況となっています・・(;_;)
現在の日本で、三環形抗うつ剤で心配なく使えるのはなんと、数年前に製造中止が発表され、全国の精神科医から大反対の意見が上がり、急遽、製造中止が取り止めとなったスルモンチールくらいとなりました。全国の精神科医の皆さんがスルモンチール製造中止を阻止してくれてよかった‥
アナフラニールも長崎ではときどきあやしい‥
トリプタノールはいつか復活してくれそうだけど、そうなると、とりあえず、使える三環系抗うつ薬は、
スルモンチール・アナフラニール・トリプタノール
のたったの3つ?!
娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす
と平家物語の語りを思い出されます‥(;´д`)トホホ
ノリトレンはまだ出せています。
でも、使えなくなることが予告されていますので現在服用している患者さんたちのは少しずつ減量を目指していますが、なかなか進みにくい方もおられます。
アモキサンは酷かった、
急に使えなくなったので、そしてアモキサンに変えられる抗うつ剤というのがなかなかない、トフラニールが似ているかなと変えた人たちは、ほぼ不適で、なんとか飲めた方も、効果が不安定。
替えたトフラニールが合わなかった人の一人は、プロチアデンに替えてなんとかとホッとしていたら、プロチアデンがまた使えなくなり、アンプリットに逃げたら、アンプリットは合わなくて、そして、ほどなくアンプリットも使えなくなって‥
改めてアモキサンの使いやすさを思い知らされたのでした。
あと、いま供給不足で困っているのは抗コリン作用薬!
抗パーキンソン剤のアーテン、アキネトン、薬剤性パーキンソニズムでは第一選択で使ってましたし、アーテンはフラッシュバック、悪夢にも役立って、不安時として助かっていた方たちも少なくありませんでした。
プロ・バンサインは多汗に、
トランコロン、トランコロンPは下痢型過敏性腸症候群に、
プリンペラン、ブスコパンは過敏性腸症候群の腹痛に
となくてならない薬でしたが、どれもこれも使えなくなり、いま、そういった抗コリン剤でしのいでいた方たちに出せる抗コリン剤といったら
セスデン
のみとなりました。
本来、胃潰瘍の薬ですが、パーキンソニズムにも、発汗にも、過敏性腸症候群にも、腹痛にも流用しているという、落語の葛根湯医者ではありませんが、セスデン医にならざるを得ない、どこまで通用するのか‥、 笑えない
という、これまた惨憺たる状況・・・