本日の言霊 2024.04.26

 

 「まさか」「想定外」「騙された」と言ってしまう人は、相手や社会に対して自分勝手な幻想を抱いていただけである。「裏切られた」と言ってしまうのは、「自分は浅はかだった」と公表するようなもので、そういう余計な言葉を吐くと、周り巡ってまた騙されることになるから注意した方がいい。

 

 ダンテはいわば「左遷」された人で、政争に敗れてフィレンツェから永久追放になってしまい、各地を放浪して書いたのが『神曲』である。よって『地獄篇』では、自分を左遷した人間たちをすべて地獄に落としてしまう。まさに恨み節を吐き出しているのだ。

 

 しかし、政治の世界というのはもともとタヌキとキツネの化かし合いなのだ。冷静に考えれば自分の思慮遠望が足りなかっただけの話で、それを恨んでみても仕方がない。結局はもっと自分が思慮深い人間になれるかどうかである。恨んだ相手を地獄に落としてみても、結局、心は空虚になるばかりである。