「いろは歌」と「即身成仏」の謎 その35

 
 前回の連載、”弘法大師「空海」と真言密教の謎”の中(その13〜15)でも「如意宝珠」(にょいほうじゅ)のことを取り上げたが、空海に関わる「如意宝珠」には2種類ある。一つは恩師・恵果阿闍梨より授けられた「如意宝珠」で、これは室生寺の「如意山」(にょいやま)という小高い丘に埋められていると伝えられており、それは門外不出とされ世に出ると災いが起こると言いつたえられている。この「如意宝珠」については、東寺に残された空海の遺言状『遺告二十五箇条』の二十四条に記されている。
 
 室生寺に伝わる「如意宝珠曼荼羅」では宝珠は1つで描かれているのだが、仏教美術として描かれる「摩尼宝珠曼荼羅」では宝珠は3つで描かれる。これは「三弁宝珠」と呼ばれているもので、仏教美術の専門会社で、真言宗の美術品を作成している大進美術では、これを「(摩尼宝珠)法身偈 如意宝珠曼荼羅」としている。ある時は1つで、またある時は3つ。唯一絶対神として描くか、天界の三神として描くかという違いなのだろうか。
 
左:室生寺の「如意宝珠曼荼羅」 右:摩尼宝珠曼荼羅
 
◆「如意宝珠」と「仏舎利即如意宝珠」
 

 「(摩尼宝珠)法身偈 如意宝珠曼荼羅」の説明文では、「如意宝珠」と「仏舎利即如意宝珠」とする二様が古くから大師の御伝として伝えられており、大海の底の龍宮の宝蔵にある無数の玉の中で「如意宝珠」を皇帝のように最も優れたものとする。曼荼羅の中央上部に三弁の宝珠を納置した重層の楼閣があり、上下には大海の波間を描き、湧雲の中から水中の主である仏法守護神の二大龍王が頭を持上げ三弁宝珠を讃仰するかの様に虚空を駆け昇る姿を描くとある。

 また、画面の右側の龍は兄弟龍王の兄で、
九頭頂に蛇が居住すると言う。陰陽思想の「九」は陽の極まり、数が極めて大きく強力であると言う意味で「九」を冠し九龍と呼ばれ大龍なり、左側は跋難陀龍王で七頭頂に同じく蛇が居住する。そして、龍王の姿と働きは、地震や竜巻、台風や津波を起こし、大身をくねらして海を荒らす。国土とは龍体の大地であり、その地下には穴道がのびて巨大な地下世界となっており、地上の入口が龍穴で、仏法の法力により姿を現す龍神である弘法大師の神泉苑の伝説によれば金色の蛇でもあるとしている。

 

如意宝珠と虚空蔵如意宝珠

 

 説明によれば、「如意宝珠」と「仏舎利即如意宝珠」の2種類が伝わっているとしてるが、恵果阿闍梨より与えられた「如意宝珠」は鎮護国家の為に室生山中の精進峰に埋めたことになっており、それは「仏舎利即如意宝珠」である。もう一つの「如意宝珠」とは、「龍宮」にあった「三弁宝珠」で、二大龍王が守っているという。「龍宮」とは「隠岐」のことである。つまり、「如意宝珠」は隠岐から持ち込まれたものなのである。

 

 一方の「仏舎利即如意宝珠」は、地震、竜巻、台風、津波を起こして海を荒らす「龍」となっているが、それは荒ぶる龍神「ヤハウェ」の象徴であり、兄弟龍王はそれぞれ「九頭頂と七頭頂に蛇が居住する」という伝承は、「八岐大蛇」のことを象徴している。ヤマタノオロチは股が8つ、つまり8つの三叉(=角)があることで「箱」だと分かり、その正体は荒ぶる箱の「契約の聖櫃アーク」のことである。

 

 さらに「頭頂に蛇」がいて、9つの頭と7つの頭があるといえば、これもユダヤの神宝である7枝の燭台「メノラー」と8枝の燭台「ハヌカー」のことである。双方とも燭台の頭の部分は「蛇」の形をしており、「メノラー」は厳密には中央の1本は枝ではないので6枝で、「ハヌカー」は左右に4本ずつ枝が伸びて中央と合わせて9つ火皿がある。現在、「メノラー」は出雲大社のご神宝であり、「ハヌカー」は神魂神社のご神宝となっている。

 

メノラーとハヌカー、契約の聖櫃アーク

 

 「隠岐」は古代日本の秘密を隠す「淤能碁呂島:オノゴロジマ」であり、「隠」の古字「鬼」が宝の「七枝燭台メノラー」を捧げ
た「鬼ヶ島」で、鬼の逆読み「仁王」(におう)が陰陽一対の「島前」「島後」として「御神体」を守護していた。「隠岐」は桃太郎である「事代主」(ことしろぬし)が、「鬼ヶ島」から「七枝燭台メノラー」を「出雲大社」に運び出し、別名を鬼の王「温羅」(うら)と呼ぶ事から
「うらしま:温羅島=浦島」のとなり、七枝燭台を支える台は八足であることから「八岐大蛇」となり、「隠岐」は龍が棲む「龍宮城」とも言われたのである。

 浦島太郎は「亀=箱」に乗って「龍宮城=隠岐」に赴き、
「玉手箱」である「契約の聖櫃アーク」の「箱」を受け取り、「籠神社」に運んだため、今も亀に乗った「倭宿禰」(ヤマトノスクネ)の像が境内に置かれている。

 

倭宿禰が持つ「如意宝珠」(籠神社)

 

 「隠岐」の西側の「島前」は「西ノ島」「中ノ島」「知夫里島」の三叉の聖域で、東側の「島後」も「オリオンの三ツ星」に配置された「伊勢命神社」「水若酢神社」「玉若酢神社」が三叉の聖域となる。空海は島前と島後の2つの「三叉の聖域」を密教のシンボル「三鈷杵」として表したのである!

 

 「隠岐」から籠神社へとアークを運び入れたのは「徐福」であるが、隠岐の神宝だったメノラーやハヌカーを無理やり出雲大社と神魂神社に移動させたのは「八咫烏」である。よって、現在も隠岐と出雲は仲が悪い。しかし、なんで空海には「如意宝珠」と「仏舎利即如意宝珠」の伝承が残っているのだろうか。「三鈷杵=隠岐」と考えた場合、隠岐を呪術的に完全に封印したのは空海だったことを意味しているのではないか。
 

隠岐の島前・島後と三鈷杵

 

 空海と隠岐、籠神社はつながっている。そこに関わるのが、籠神社の娘であった「真名井御前」と、空海に授けられた籠神社の神宝「潮満珠・潮干珠」である。

 

◆ 「如意宝珠」の正体とは何なのか

 

 「隠岐」の後醍醐天皇の懐中物のレプリカには「壺」が彫られているが、更にその壺から不思議な「塊」が幾つか出ているという。陰陽一対の愛染明王と不動明王の間に散らばるのは「如意宝珠」であり、字義は「意のままに願いをかなえる宝」で、敵を殲滅させる「勝軍破敵」の秘宝とされるため、懐中は後醍醐天皇による北条氏打倒の「呪詛」の形見となる。

 後醍醐天皇の懐中の壺から出て来る
「如意宝珠」は稲穂の女神が持つ丸い物体で、『古事記』はその女神を「宇迦之御魂神」(ウカノミタマノカミ)、『日本書紀』は「倉稲魂命」(ウカノミタマノミコト)というが、天孫降臨した「瓊瓊杵尊」(ニニギノミコト)に稲穂を与えたのは「天照大神」である。

 

「如意宝珠」?稲穂の女神が持つ丸い物体

 

 『古事記』で「瓊瓊杵尊」は「邇邇芸命」とあるように、その名前の中に「爾(ジ)」という字が入っている。「爾(ジ)」は「契約の聖櫃アーク:璽」のレビ族の名で、「邇邇」の2つで始皇帝の命で「璽」を瓢箪(ひょうたん)の「鶴」と箱の「亀」に分けた徐福が、日本列島に天孫降臨したニニギの正体となりで、その時に預言者の証である「如意宝珠」を一緒に運び込んだという。

 「如意宝珠」の桃のような形の図柄は、八咫烏の本拠地である
「熊野本宮大社」の〝牛玉宝印〟にあり、狐の「伏見稲荷大社」の〝御朱印〟と共に〝燃え光る珠〟として伝わっている。徐福の「如意宝珠」は「籠神社」で長く所蔵されていたが、海部直(アマベノアタイ)の一族で第31代宮司の雄豊(オトヨ)の娘「厳子姫」(いつこ)が若き空海に与えて唐に赴かせた記録があり、娘は後に「真名井御前」(まないごぜん)と呼ばれ空海に帰依している。

 

熊野3社と浅草寺の牛玉宝印

 

 「如意宝珠」とは、いったい何なのか?

 それは『聖書』に何度か登場する「ゾハル/ ZOPHAR 」という輝く結晶石を指し、ゾハルは火(ロウソク)を使えない「ノアの箱舟」の船内や神殿の内部を照らした〝光の結晶体〟のことで、「明かり取り」という表現で『聖書』に印されている。

 

 神殿の正面は、神域に面する裏側と同じくその幅は百アンマであり、 神域に面し、その裏側にある別殿の横幅を測ると、その両側のテラスを含めて百アンマであった。奥の拝殿とその前の廊と、 敷居、明かり取りの格子窓、敷居の前の三方にある周りのテラスは、それぞれ周囲を板ではり巡らされていた。その床から窓まで、それから窓枠も板張りであった。 そして、入り口の上まで、また、神殿の内側と外側にも、更に周囲の壁にも内側と外側に、くまなく、 ケルビムとなつめやしの模様が刻まれていた。(「エゼキエル書」第41章14-18節) 

 

輝く結晶石「ゾハル」(イメージ)

 

 神はノアに言われた。『すべて肉なるものを終わらせる時がわたしの前に来ている。彼らのゆえに不法が地に満ちている。見よ、わたしは地もろとも彼らを滅ぼす。あなたはゴフェルの木の箱舟を造りなさい。箱舟には小部屋を幾つも造り、内側にも外側にもタールを塗りなさい。次のようにしてそれを造りなさい。箱舟の長さを三百アンマ、幅を五十アンマ、高さを三十アンマにし、 箱舟に明かり取りを造り、上から一アンマにして、それを仕上げなさい。箱舟の側面には戸口を造りなさい。また、一階と二階と三階を造りなさい』(「創世記」第6章13-16節)

 

 三階建のノアの箱舟は、大洪水で荒れ狂う海の中を漂ったのだ。船内でロウソクを使っていたらすぐに火災が起き、人も動物も死ぬことになる。つまり、「ゾハル」を照明として使用したのである。

 

ノアの箱舟の船内はゾハルが輝いていた?


  「ゾハル」とは「輝き」という意味で、「ゾハル」そのものが光を放つ物体、発光する石の結晶だったのである。更に「ゾハル」は神の光を放射する結晶体とされており、その光とは「プラズマ」のことである。プラズマが輝く結晶体、それこそが「如意宝珠」の正体だったのである!

 

<つづく>