アーバン・ミュージック・クロニクル:夜の街にくり出すテーマ曲

 「ラヴィン・ユー 」 / マーカス・ミラー 

 

 

 マーカスのバキバキのベースが堪能出来る80'Sエレクトロ・ファンク・ナンバー!

 

 

 角松敏生が"FUSION 1000"シリーズからセレクトしたコンピレーション・アルバム『角松敏生 presents FUSION BEST COLLECTION』の1曲目にも選んでいる80年代を代表するアーバン・ファンキー・グルーブ・ナンバー。1983年のマーカス・ミラー(MARCUS MILLER )のソロ・デビュー・アルバム『SUDDENLY』のオープニングに収録され、シングル盤にもなっているのがこの「ラヴィン・ユー(LOVIN' YOU)」だ。もう細かいことは言わずともシンプルに「カッコいい曲」とはこういう曲のことだ。

 

 

 

 

 アーバン・ミュージックは「カッコ良さ」が勝負だ。ロックではないので政治的な思想とかには無縁な音楽でいい。その意味で、昨日書いた山下達郎も中期までは歌詞には全く興味がない人だったし、黒人ミュージックも大好きだった人だからこそああいうサウンドの曲を作り上げられたのだと思う。

 

 夜の街に出かけるのが少々億劫になっていても、この「ラヴィン・ユー」のマーカスのバキバキのベースの音を聴いただけで、体が勝手に動いてしまう。もはや夜の街の遊び人たちにとってのテーマソングといえるエレクトロ・ファンクだ。やはりマーカスのベースの破壊力はずば抜けている。これを真似して同じ音を出せても黒人の肉体から奏でられるグルーヴは真似できるものではない。

 

 ちなみにこのシングルのカップリングのアーバン・メロウ・グルーヴ「MUCH TOO MUCH」もいい。JAY-Z FEAT. MARY J. BLIGEの「CAN'T KNOCK THE HUSTLE(LP VERSION)」でもサンプリングされたナンバーだ。これも同じソロ・デビュー・アルバム『SUDDENLY』の2曲目に収録されている。

 

 

 マーカス・ミラー(MARCUS MILLER )はジャズ・フュージョン界で活躍してきた世界的スラップ・ベーシストとして名高いが、音楽プロデューサー、作曲家、編曲家としても非凡な才能を見せ、デイヴィッド・サンボーン、ルーサー・ヴァンドロスらのアルバムをヒットさせている。また、映画音楽、CMなども多数手がけているる。筆者的にはやはりルーサーの作品が好きだ。近年の自身のアルバムには、様々なジャンルの楽曲に我流のテイストを加えたアレンジで様々なカバーもしている。
 

 1977年製フェンダー・ジャズベースをトレードマークに、タッピング奏法、独特のネック寄りのフィンガー・ピッキングなどを駆使し、独自で非常に豊かな表現力と深みを醸し出している。ある意味70年代のルイス・ジョンソンのチョッパー・ベースに並ぶ存在で、マーカスのスラップ奏法は他のベーシストにも多大な影響を与えている。親父さんもミュージシャンであり、その血を色濃く受けているせいか、ジャズ、R&B、ファンクなどのブラックミュージックを昇華したベースラインやグルーヴ感を伴った演奏は、単なるベーシストとは異なる最大の魅力でもある。


 

 ちなみにソロ・デビュー・アルバム『SUDDENLY』の共同プロデューサーであるMichael ColinaとRay Bardaniには90年代にNYのレコーディングで大変お世話になった。もちろんマーカスを含め、このアルバムに参加したミュージシャンの大半にお世話になった。MichaelもRayもピザが好きで、スタジオへの宅配ピザ屋をどこにするかを熱く議論する姿がいかにもニューヨークの音楽人という感じで爆笑してしまったことを思い出した。