2023年グラミー賞:その3 ヒップホップ・レジェンドの登場に歓喜!
今年のグラミー賞でのヒップホップ50周年パフォーマンスが豪華すぎでたまらなかった。筆者は日本のヒップホップのレジェンドから今から20年以上前に「オールドスクールなんですね」と言われたことがあった(笑)。「内心、何言ってんだ、こいつ」と思ったが、筆者が80年代前半にアメリカで大量に購入していたヒップホップのアルバムや12インチシングルというのは、日本ではほとんど発売されていなかったため、というかアメリカでもエリアによっては全然売ってなかったため、日本のヒップホップクルーにとっては見たことが作品ばかりだったようで、「貸してください」と貸したきり未だに返されていない(笑)。ヒップホップのアーティストにレコードを貸して、返してもらったことは一度もない(笑)。まぁそれがヒップホップというものだから仕方がない。
さて、ヒップホップ50周年パフォーマンスに登場したのがGrandmaster Flash、Missy ElliottからLi Uzi Vertまで、もう温故知新を表現したメドレーパフォーマンスとなったのだが、やはり”オールドスクール”な自分としては、ヒップホップのパイオニアであるGrandmaster Flash(グランドマスター・フラッシュ)の登場に歓喜した。さらにFurious Five(フューリアス・ファイヴ)のメンバーも登場して名曲「The Message」をやってくれたのが最高だった。
オールドスクールの面々が結集!
筆者がアメリカに渡った当初、ヒップホップはまだ「ヒップホップ」とは呼ばれていなかった。おしゃべりDJとかブレイクダンス、グラフィティといった要素にまつわる用語ばかりで、まだ一般的には黒人たちのマイナーな音楽という扱いだった。なにせ初期のヒップホップのラップときたら、いま聴いても酷いもので、お手軽なリズムボックスの音に合わせて「戦い止めて、掃除をしよう!」「そうしよう!」なんてMCのものが平気であって、「なんだこれ?」って感じだった。さらに超お金がかかってなさそうなチープなジャケットのアナログばかりで、全く中身が想像できないような作品も多かったが、逆にその辺が面白かった。
Grandmaster Flash 「The Message」
色んな初期ヒップホップを聴いていたが、やはり最もインパクトがあったのは「Grandmaster Flash& The Furious Five」だった。とにかくカッコよかった。ベシャリ(当時はまだRapとは言わなかった)もノリノリで、トラックも最高にクールだったのだが、やはりメッセージ性の強さが衝撃的だった。グラミーのパフィーマンスでやった「The Message」もそうなのだが、筆者が一番衝撃的だったのは「White Lines(Don't Do It)」だった。
「White Lines(Don't Do It)」12inch Single
初めて聴いたときは、「White Lines ? 白いひもって何のことだ?」などと理解ができていなかったのだが、それから少し経って、すぐにその意味を理解した。「コカイン」のことだった。「コカイン」は吸引する際に、粒をカッターなどで細かくしてラインを作って、一気に鼻から吸う。この曲も随所に「スッスッ」という謎の擬音が入っているのだが、それがコカインを鼻から吸う音だったのだ。それを知った時には、「こんな曲出していいのか?」とは思いつつ、要は「ストップ・ザ・ドラッグ!」というドラッグ中毒が多かった同胞の黒人たちに対するメッセージだと知って、思わず唸ったものだ。
今や日本のヒップホップもすっかり芸能界に取り込まれてしまったし、サラリーマンですらラップを競うようなTV番組に登場するようになってしまった。まぁいくら熱いメッセージを放っても、所詮、日本ではその場限りで、ラップがカッコいいか否かといった程度の扱いで終わってしまうものだ。危機感のレベルが段違い平行棒だから仕方ないのだ。
今年のグラミー賞ではこのコーナーの司会を務めたのはThe RootsのBlack Thought(ブラック・ソート)、そしてLL Cool J(LL・クール・J)の2人で、パフォーマンスの始まる前にはLL Cool JからDr. Dre(ドクター・ドレ)へのグローバル・インパクト・アワードの受賞も執り行われた。これもなかなかカッコよかった。
ステージのパフィーは、まずはGrandmaster Flashが登場、その後はRun-DMC、Ll Cool Jと続き、Salt-N-Pepa、Rakim、Public Enemy(パブリック・エネミー)とオールドスクールな面々がパーフォマンス。これだけで破壊力バツグンだった。その後に出てきたメンツは徐々に誰だか分からなくなってきた。なにせ”オールドスクール”なもので(笑)。