「僕は変わる努力はしないんです。むしろ変わらないものを持ち続けている方が大事かな。本当に必要なら、自然に変わりますよ」

 

水谷豊

 

 先月から「週刊新潮」で連載が始まった『独占告白!水谷豊』第4回目の今週号に載っていた言葉。いい言葉だ。水谷豊という人の人物像をそのまま表したような言葉である。

 この『独占告白!水谷豊』の連載と「統一教会」の関係者26,000人分の詳細な「捜査リスト」を元にした「統一教会」叩きの連載が面白すぎて、このところ「週刊新潮」に舞い戻った。

 

 「週刊新潮」には佐藤優氏の対談が毎号掲載されるので読んでいたのだが、夏前には少々パワーダウンしていたので、たまに「週刊大衆」や「週刊ポスト」に浮気したりしてしまったが、またも戻ってきた。まぁどうでもいいが。

 

 『独占告白!水谷豊』では、今週は30代のことを振り返っているのだが、かなり内容が濃くて面白い。特に病気の松田優作を見舞った際に病院で検査したら「膀胱がん」が発覚、自分が入院してしまったくだりや、見舞いに来た松田優作を一緒にトイレで隠れてタバコを吸った逸話。そして若い頃からファンだった伊藤蘭との結婚、38歳で初めて子宝に恵まれた話など、どこを切ってもいい話ばかりだ。

 奥さんのことを今でも「蘭さん」と呼ぶあたりにも、水谷豊の人柄を感じさせる。相変わらず伊藤蘭もかわいい。今年は伊藤蘭の最新アルバムにハマったりと、夫婦の両方のファンというカップルは、山下達郎と竹内まりや以外にはこの方々だけかもしれない。本日も山下達郎のラジオ番組では恒例の「夫婦放談」だ。これまたどうでもいいが。

 

 

 水谷豊という人は、若い頃はかなり特殊な俳優さんだと思っていた。最初に記憶に刻まれたドラマが『傷だらけの天使』だったからかもしれない。萩原健一、岸田今日子、岸田森と、もう濃い俳優さんたちに囲まれたドラマだったし、かなり衝撃的な内容が多かったからかもしれない。

 

 小学生の頃、水谷豊がこのドラマの中で萩原健一のことを「アニキィ〜」という呼び方が子供達の中でも流行った気がする。いや、普通の小学生はこんなドラマを親が見せないから、僕を含む一部の不良小学生の間のことだけだったかもしれない(笑)。

 なにせ僕の場合、幼稚園児の時から金曜の21時には「ザ・ガードマン」、小学生低学年で土曜の21時が「キーハンター」で22時が「傷だらけの天使」を見ていたという筋金入りの不良児童だった。

 

「傷だらけの天使」

 

 水谷豊という人は、連載でご本人の言葉を見ていると、かなり「自然体」の人なんだと感じる。常に妙な気負いがないのだ。外側からみるとかなり気合が入っているのではと思ったりする芝居もあるのだが、人生を通じて妙な「無理をしない」をしてこなかったらしい。それを象徴する言葉として「あまりバタバタしなかった」と語っている。

 

 人生がうまくいかない時や、現在の自分が立っている位置に焦りを感じたりすると、人間は妙にジタバタしてしまうものだ。だが、30代以降の水谷豊を見てきて思うのは、まさに「自然体」な生き方で、違うドラマで違う役柄のはずなんだが、現在の「右京」までずっと同じ役を演じているかのように感じてしまうのだ。水谷豊という人が演じると妙な安心感があるところがそう感じさせてしまうのかもしれない。 

 これはワンパターンということではない。どんな役柄をやっても同じになってしまうという下手な役者がいるが、そうではないのだ。特に20代の若い頃にインパクトのあるドラマや映画に出ていたからかもしれないが、水谷豊という人間の人格を垣間見てしまうということなのだろう。

 

 結論としては,水谷豊という人は「いい人間なんだ」ということなのだと思う。「いい人間」というのは真面目とか、悪いことをしない人ということではない。「気持ちの優しい人間」という意味だ。若い頃もちょっと悪そうな役をやっていたが、悪にはなりきれない感じの弱さというか優しさみたいなものを醸し出していた。

 きっとこれからもこの人は「いい人間」の役をやっていくことだろう。それがこの人の役者として使命なのかもしれない。