「フリーメーソン」の真実 その5

 

 『アンダーソン憲章』によれば、フリーメーソンは紀元前4000年をフリーメーソン暦1年に規定しており、紀元前4000年前にフリーメーソンは誕生したと宣言している。これが、「フリーメーソンはこの世の初めから存在している」と主張している理由なのである。 

 

◆宇宙の偉大なる建築者と人祖アダム

 フリーメーソンの思想の根幹には「聖書」がある。世界は絶対神ヤハウェによって創造=建築されたということである。宇宙は巨大な構造物であり、創造主である神は「偉大なる建設者」である。 『アンダーソン憲章』には
「宇宙の偉大なる建築者である神」と書かれている。つまり、この宇宙を建築した「大工」という意味なのであり、フリーメーソンにとっての究極のグランドマスターとは、創造神ヤハウェに他ならず、創造神ヤハウェはフリーメーソンなのだ。 

 旧約聖書の「創世記」に「われわれのかたちに、われわれにかたどって人を造り」とあるように、絶対神の似姿として創造された人祖「アダム」もフリーメーソンなのである!人類最初のフリーメーソンにしてグランドマスターである。

 

 

アダムの創造

 

  『アンダーソン憲章』には「神の姿を模して創造されたアダムは自由科学、とりわけ幾何学を学び、心に刻んでいた」と記されている。つまりアダムは最初のグランドマスターである創造神ヤハウェから建築の基礎である科学と数学を学び、技術を習得した。そしてアダムが手にした建築技術は息子たちに継承される。

 長男カイン、もうひとつが弟のセトである。カインは都市を築き、息子エノクは科学技術を発展させた。トバル・カインは金属精錬と加工技術、ユバルは音楽演奏技術、ヤバルは牧畜と天幕の建造技術を磨いた。

 一方のセトは天文学に秀で、彼の子孫には幾何学と石工技術が伝授された。アダムから10代目にあたるノアは、幾何学と石工の技術によって、決して沈まない黄金比率の「箱舟」を建造した。このノアの3人の息子、セム、ハム、ヤフェトが現代につながるフリーメーソンの元となる。

 

 

ノアの箱舟(想像図)

 

◆フリーメーソンと神殿建設

 

 フリーメーソンにとって最も重要な建築物は「神殿」である。創造主ヤハウェを祀る神殿を建築することは聖なる御業であり、アダムはヤハウェを祀る祭壇を築き、ノアは新世界を祝福して祭壇を作り、神への犠牲を捧げている。

 

 実は「バベルの塔」も神殿で、「ニムロド」はメソポタミア地方に数多くの都市を建設している。聖書でいえば「ニムロド」という名前は「神に反逆する者」を意味するが、『アンダーソン憲章』では偉大な建築者の一人として紹介されている。

 

 

バベルの塔

 

 古代バビロニアには聖塔ジグラットが建設された。ニムロドの叔父のミツライムは古代エジプトに移住、ピラミッド群を築いている。つまり古代オリエント文明の担い手はフリーメーソンである。さらに、アダムとノア以降の両文明を結ぶ重要なフリーメーソンにして預言者が「アブラハム」である。

 

 

 

 アブラハムの知識と技術は息子イサク、孫ヤコブに受け継がれ、ヤコブが「イスラエル」の名を神にもらった後、12人の息子達から「イスラエル12支族」が誕生。預言者=グランドマスターに率いられた12支族はそのままフリーメーソンである。ヤコブの子孫はエジプトに移住、石工としてエジプトの担い手となるものの、奴隷の身に落とされる。そこに現れたのが大預言者・モーセである。

 

 モーセに率いられたイスラエル人の組織はそのままフリーメーソンで、神の指示通りに「契約の聖櫃:アーク」を作り、弟子達に知識や技術はもちろん、「幕屋」の中で秘儀を伝授した。聖所に入れるのは「祭司レビ人」のみで、特に「契約の聖櫃アーク」を取り扱うことができたのは大祭司コーヘンに限られていた。祭司レビ人たちはマスターメーソンであり、大祭司コーヘンたちはグランドマスターであり、移動式の神殿だった幕屋は現代のフリーメーソンの「ロッジ」と同じなのである。

 

◆ソロモン神殿と「ヒラム・アビフ伝説」

 

 古代イスラエル人は「イスラエル王国」を築く。モリヤの丘に固定式の神殿を建造し、契約の聖櫃アークが安置された。これが通称「ソロモン神殿」である。古代イスラエル王国の王は、全てグランドマスターであるが、なかでもソロモン王は別格。『アンダーソン憲章』によれば、古代イスラエル王国は「完全なるフリーメーソン王国」であり、ソロモン王は「完全なるフリーメーソン王」だったのである。

 

ソロモン神殿(想像図)

 

 ソロモン神殿の建設を仕切ったグランドマスターで、フリーメーソンのレジェンドとされるのが「ヒラム・アビフ」である。フリーメーソンの参入儀式の中で重要なのが、「職人フェロークラフト」から「親方マスターメーソン」に昇級する際に行われる密議で、そのテーマは「ヒラム伝説」である。ヒラム・アビフの生涯を演じることによって、グランドマスターの人生を追体験する仕組みになっているのだ。

 

メーソンの密儀

 

 

 ヒラム・アビフの人生を追体験する内容とは、以下のようなものである。

 

 ヒラム・アビフは神殿が完成間近となった時、15人の「職人」が「親方」マスターメーソンの暗号を聞き出そうと企み、その中の3人が作戦を実行した。3人の名はジェベラ、ジュベロ、ベラムといった。3人は神殿の南・西・東の門でヒラムを待ち伏せる。ジュベラは南門で暗号を聞き出そうとするが、拒否されて持っていた「定規」でアビフの右頬を切りつけた。西門ではジュベロが暗号を教えるように迫るが、拒否された為「コンパス」で胸を突く。負傷したアビフは東門へ走ると、そこにはハンマーを持っていたジュベラムが待っていた。アビフは断固拒否したためハンマーで殴打され、絶命する。

 

ヒラム・アビフの殺害

 

 事件は起きてから14日が経ち、ソロモン王が弟子たちに捜索させると、神殿の東方にアビフの遺体が現れた。弟子たちは秘密の儀式を行い、「獅子爪:ライオンズポー」と呼ばれる「秘密のハンドサイン」で遺体と握手して引き上げたが、その後にアビフは息を吹き返し、見事に復活したという。

 

 なんやら怪しい伝説である。そう、これは伝説であって事実ではない。日本の古代史における神話と同じで、フリーメーソンの「奥義」はここに隠されているということで、その意味を理解できるか否かということが重要なのである。現在のフリーメーソン結社員の多くはこの密儀の意味を理解していない。あくまで密儀は「象徴」なのであり、至るところにある象徴の中にこそ奥義がかくされているということなのである。

 

 日本という国は象徴に次ぐ象徴の国である。この「ヒラム・アビフ伝説」すら漫画やアニメにしてしまう。マスターメーソンの暗号を聞き出そうと企んだ3人がヒラム・アビフを殺害したが、この3人の名はジェベラ、ジュベロ、ベラムといった。日本では「妖怪人間ベム」というアニメになっている(笑)。

 

「妖怪人間ベム」

 

 なにせ妖怪人間の名前は「ベム・ベラ・ベロ」だ。「妖怪人間ベム」のストーリーは、いつどこで誰が生み出したのか誰も知らない、人でも動物でもない異形の怪物――「ベム」「ベラ」「ベロ」と名乗る3人の「妖怪人間」で、時には人々に迫害され、また時には友情を育みながら、いつか人間になれる日を夢見て彼らは世に仇なす悪と戦い続けるという内容だ。

 決めゼリフは「早く人間になりたい」というやつだが、人間の姿をした妖怪である。指は「3本」で、ベラには「死者蘇生」の能力もある。これは象徴だが、まさにヒラム・アビフの蘇りだ(笑)。さらに雷を呼んで、相手の頭上に落として一撃で白骨死体にするという力も持つ。雷の神というのは聖書では「ヤハウェ」である。もはや笑うしかないが、あくまでアニメという象徴で描いているものの、フリーメーソンの密儀の核は「ヒラム・アビフ伝説」に則った「死と再生の儀式」なのである。

 

<つづく>