「雛祭り」と終末預言:その2

 3月3日の「雛祭り」は、一般的には「身代わりの神事」であり「婚礼の象徴」といわれている。雛人形を飾るのも流し雛の風習も、人形に女の子の穢れを移して、厄災を身代わりに引き受けてもらうため。厄払いの意味があるため、3月3日当日だけではなく長い期間飾られる。雛人形は婚礼の様子=結婚の象徴とも考えられ、皇室の結婚がそのベースにあるともいわれている。飾られる期間は地域によってことなるものの、早く片付けることで嫁に早く行けるとことを表現しているとか、女の子に片付ける躾けとして行われているとも言われている。

 

 「雛祭り」は呪詛であり預言でもある。表向きにはいかにもな理由がつけられているものの、本質的な意味は別のところにある。

 

◆「雛人形」の構成

 

 雛人形には7段飾りやらお内裏様とお雛様だけのシンプルなものまでいろんな種類があるが、多様になったのは戦後の話で、特に人形メーカーが様々な種類の雛人形を発売してきたことによる。だが、その裏側には日本成立の秘密と未来の預言が込められている。「人形屋」とはいったいどういう仕事なのか、かなり興味を惹かれるが、それは改めて書いてみたい。

 

 

 

 写真の雛人形は7段飾りで、基本的な要素が網羅されている。1段目に「お内裏様とお雛様」、2段目に三人官女(さんにんかんじょ)、3段目が五人囃子(ごにんばやし)、4段目は隋臣(ずいじん)、5段目が仕丁(しちょう)。6段目と7段目は人間ではなく婚礼に関する物と言われている。

 

 雛人形は本家の「京雛」と「関東雛」に大きく分けられ、人形の特徴も飾り方も少々異なる。
 <京 雛>目がやや細めで、おっとりとした顔立ち→向かって右に親王が座る
 <関東雛>はっきりした目鼻立ち→向かって左に親王が座る

右と左が異なる。これは陰陽であり、鏡に映った鏡像反転の意味に加え、実はもっと深い意味があるのだが、それは後述させていただく。

 

◆「お内裏様とお雛様」の意味

 「お内裏様」と「お雛様」というのは天皇と皇后、そしてその結婚を表しているともいわれている。童謡の「うれしいひなまつり」は「お内裏さ〜ま〜とお雛さま〜」と歌われているが、お内裏様は殿と姫の二人を合わせて指す言葉とされる。そう、「二人で一人」「男でもあり女でもある」が「お内裏様」の正体なのである。

 次は三人官女(さんにんかんじょ)と五人囃子(ごにんばやし)であるが、これまた両方とも古事記に登場する「天照大神とスサノオ命」の神話がベースになっている。いや、雛人形には日本神話の真髄が込められている。

 

◆雛祭りと日本神話

 雛祭りと雛人形は「婚礼の様子」を再現したものとされるが、実は古代の日本神話に根ざす壮大な宇宙観が反映されている。その原型は「古事記」の主人公である「天照大神」「スサノオ命」で、あえて新郎と新婦という象徴で描いている。その神話が天照大神とスサノオ命の誓約(うけい)である。

 

  

 

 「誓約(うけい)」とは神聖なる誓いのことで、高天原の天安河をはさんでの誓約により二人の神に子供が生まれる。天照大神からは3人の女神、田心姫(たごりひめ)、湍津姫(たぎつひめ)、市杵島姫命(いつきしまひめ)が誕生。スサノオには5人の男神、天忍穂耳命(あめのおしほみみ)、天穂日命(あめのほひ)、 天津彦根命(あまつひこね)、活津彦根命(いくつひこね)、熊野櫲樟日命(くまののくすひ)が生まれ、5人の男神は天照大神の子に、3人の女神はスサノオの子とされた。二人の神が生んだとされるこれらの神々が「三人官女」と「五人囃子」の正体である。

 

◆三人官女(さんにんかんじょ)
 2段目に配されるのが、お内裏様とお雛様に仕える三人の侍女という。向かって向かって右から、長柄の杓(ナガエ)、中央は島台または三方(サンポウ)、左は提子(ヒサゲ)または銚子を持っている。というのが通常の説明である。

 

◆五人囃子(ごにんばやし)
 能楽のお囃子を奏でる五人の男子。向かって右から謡(ウタイ)、笛、小鼓(コツヅミ)、大鼓(オオツヅミ)、太鼓となります。また五人囃子ではなく「五人雅楽」の場合もあり、向かって右から羯鼓(カッコ)、楽太鼓、笙(ショウ)、篳篥(ヒチリキ)、横笛となっているものもある。とされている。

 

 この「三人官女」と「五人囃子」が持っている「物」は全て日本神話の象徴である。説明が長くなるため、その他のものとまとめて説明をしたいと思うので後述するが、さらに雛人形に登場する人間には隋臣(ずいじん)と5段目が仕丁(しちょう)がいる。

 

◆隋臣(ずいじん)
 御所に坐するお内裏様とお雛様を守る役割とされる。悪者が近寄らないように守るという意味合いがあるともいう。古くは左の方が高貴とされてたので、向かって右が左大臣で年配者、左が右大臣で若者とする。

 

◆仕丁(しちょう)

 従者と護衛の姿を現していて、怒り・泣き・笑いの表情から「三人上戸」と呼ばれたりもする。向かって右から立傘(タテガサ)、沓台(クツダイ)、台笠(ダイガサ)になるが、宮中の清掃の役目を表す道具を持つこともあり、その場合は向かって右から箒(ほうき)、塵取(ちりとり)、熊手(くまで)となる。

 

 この箒(ほうき)、塵取(ちりとり)、熊手というのが曲者で、「清浄なる場」を作り出すための道具であるのだが、これは皇祖神の怒りが頂点に達すると、日本人は神によって掃除されてしまうというのが裏側の意味合いである。これも象徴であり預言である。三人官女や五人囃子の持ち物も全て象徴であり未来の預言に関わる品々であるが、まずはどんなものが配置されているのかを先に書いておかないといけない。

 

◆6段目と7段目は嫁入り道具?

 

  

 

 雛壇の6段目には、「雛道具」が置かれる。これらの雛道具は婚礼道具をモデルとしていて、嫁入り道具とも呼ばれる。向かって左から箪笥(たんす)、長持(ながもち)、鏡台(きょうだい)、針箱(はりばこ)、火鉢(ひばち)、衣裳袋(いしょうぶくろ)、茶道具(ちゃどうぐ)の順に並べる。昔の姫君たちは子供のころからこの御道具でおままごと遊びをすることで、家の中のことを覚えていったという。だが、それはあくまでも表向きの話である。

 

  

 

 七段目にあるのが御輿入れ道具(おこしいれどうぐ)とされている。7段目は向かって左から「御輿」(おこし)もしくは御駕籠(おかご)、重箱(じゅうばこ)、牛車(ぎっしゃ)である。御駕籠(おかご)は座る部分を一本の棒に吊し、複数人で棒を前後から担いで運ぶ乗り物で、江戸時代を舞台にしたTVドラマなんかにもよく登場する。同じように人が担いで運ぶ輿(こし)は、2本以上の棒の上に人が乗る台を載せたものとある。重箱(じゅうばこ)は現代人にとっては主にお正月の「おせち料理」を入れるものという認識である。箱を何段にも重ねた事から名づけられているが、室町時代の文献の中に既に「重箱」の記述があり、一般庶民に普及したのは江戸時代とされている。

 

 最後は、牛車(ぎっしゃ)である。牛に牽引させる車のことで平安時代の交通手段のひとつとして貴族の一般的な乗り物だったが、使用者の権威を示すものという意味にもなった。牛車には、基本的に男女の区別はないが、その一方で昇降には細かい作法があり女性が乗る場合には「出衣(いだしぎぬ)」といって 簾(すだれ)の下から衣や 下簾(したすだれ)を出すことで「女車」と分かり、その趣向・風情で身分・家柄もある程度表したと伝えられている。

 

 ここまでで嫁入りの道具も揃って、さぁ嫁入りだということになるわけだが、これまた表向きの説明でしかない。

 

 「御輿」(おこし)とは神輿(みこし)のことである。結婚道具を入れる輿の形式をとってはいるものの、雛祭りは呪術でもある。遥か彼方の古代イスラエルの民が海を超え山を超え東海に浮かぶ蓬莱山のある島国にやって来て、その国と民族の名を「ヤマト」としたのである。「ヤマト」=「ヤ・ゥマト」、ヘブライ語の「神の民」ことなのだから、単なる道具入れではない。古代のイスラエル人とヘブライに関わる宝物であるはずだ。

 神輿は神様へ奉納し、五穀豊穣を祝うために多くの人達が一緒に担ぐ輿であるが、その正体は「契約の聖櫃アーク」である。その文脈で考えると、6段目にあるもの7段目にあるもの、「三人官女」と「五人囃子」が持っているもの、1段目から5段目の人形など、「雛人形」「雛飾り」として飾られる全てのもの、「白酒」「菱餅」などお供え物も含めて全てがヘブライの故事が元になっているもののはずである。そう、旧約聖書と新約聖書、そして古事記や日本書紀の中にその正体があり、全ては象徴であり預言なのである。それを表しているのが何を隠そう「雛」(ひな)という漢字そのものである。

 

 「雛」という字をGoogleで検索すると、すぐにウィキが表示される。そこにはこうある。

  • 成鳥に対する概念で、雛鳥(幼鳥)のこと。ひよこなど。
  • 雛祭りの際の雛人形の男雛と女雛の2人で一対を表した総称として、「お雛様」。

 正々堂々と「男雛と女雛の2人で一対」と書いてある。それは日本の最高神として祀られている「男神」と「女神」の正体は一緒であるという意味だ。そう「スサノオ」と「天照大神」は「男神」と「女神」として描かれているが、その正体は一緒であるということなのだ。

 さらに「雛」という文字は「雛形」(ひながた)として使われる。「雛形」を国語辞典で調べてみるとこう書いてある。

 

 「模してつくる、そのもとになる物。手本。」

 

つまり「予型」(よけい)のことであり、「予型」とは未来に起きることの「雛形」なのである。そう「預言」として大和民族に伝えているもの、それが「雛人形」なのである。