「人生というブュッフェで欲しいものを必ず手に入れるには、ふたつの段階を踏む必要がある。まず、行列に並ぶこと。もうひとつは、その行列に並びつづけることだ」 ブライアン・トレーシー(『大切なことだけやりなさい』より)

 

 

 先日もこの書籍の中の言葉について書かせていただいたが、この言葉もスッと腹に落ちた。ブライアンが言いたいのは、もしやりたいことがあるなら、手に入れたいと心から願うものがあるのなら、「今すぐ決心して、行動しよう!」ということだ。そして、日々少しずつ前進してゆけば、必ずそれは手に入るはずだ、と。

 

 野球で例えれば、「まず打席に立つ」ことだ。

 

 打席に立ち、バットを振る。最初はボールにかすりもしないかもしれないが、何十回、何百回と打席に立てば、やがてバットでボールをとらえることができるようになる。さらに何千回もバッターボックスに立ち、バットを振り続けると、ピッチャーの球種を見分けられるようになり、ヒットを量産したり、ホームランを打てるようになるはずだ。

 

 天才打者イチローは、高校生の時に野球部の練習が終わってから、さらに毎日バッティングセンターで100球も打撃練習をしていたと何かで読んだことがある。他のチームメイトは家でご飯を食べている頃に、イチローはひたすら打席に立っていたのだ。それも3年間1日も休まずに毎日続けたらしい。1年で36,500回もチームメイトより打席に立ったことになり、3年間で言えば約120,000回も他の選手より多く打席に立ったのだ。

 

 「続ける」ことでプロになったイチローは日本の数々の記録を塗り替え、メジャーリーグ移籍1年目の2001年には歴史的快挙でリーグを席巻。MLB史上初の日本人野手となったことに加え、イチローは、安打(242)と盗塁(56)でその年のメジャー最多を記録。ア・リーグ最多安打、新人王、そし年間MVPを獲得。MLB史上、現在に至るまで最初のシーズンでこの3タイトルを獲得したのはイチロー唯一人であり、そして2004年にはメジャーリーグで84年ぶりに年間最多安打の記録を以破る快挙を成し遂げた。

 

 多分、イチローという選手は日本のプロ野球選手の誰よりも、そしてメジャーリーガーの誰よりもバットを振ったに違いないと思うのだ。だからメジャーへ行く前の日本のパ・リーグでの9年間に記録した1,278安打を含めると、イチローの通算安打記録は4,367本となり、これはメジャー最多の通算4,256安打を放ちながら野球賭博で球界を永久追放されたピート・ローズよりも111本も多いというとてつもない記録だ。

 

 ブライアンは「自分が取り組んでいる分野の上位10%の人物になる」ためには、どんなに時間がかかっても、行列に並び続け、日々前進していけば、いつか必ず行列の先頭に達し、上位10%の仲間入りができると言う。

ブライアンが言うように、イチローはひたすら「行列に並び続けた」結果、前人未到の記録を達成したのである。

 

 コロナ禍によって、我々は未来が非常に見えづらくなった。人類に残された時間もあと僅かである。だが、そんな中においても、残された時間で何かを達成したいと思うのなら、死ぬまでに手に入れたい何かがあるのなら、我々はその日が来るまで諦めずに行列に並び続けて、日々前進するしかないのである。

 そうすれば、たとえ死んだとしても、後世に名を残すことはできるのではないだろうか。