J-POP数珠つなぎ その158

「こころに海を」川崎龍介+メロディー



 いい曲だ。今じっくりと聴き返すとどうも歌はイケていないのだが、心に刻まれた記憶の中に「いい曲だった」という思い出があると、歌の下手さは気にならない(笑)。

 川崎龍介が歌う『こころに海を』は、1979年に公開されたサーフィン映画の金字塔『ビッグ・ウエンズデー』の日本限定主題歌としてエンディングに流れた曲で、映画館で見た人しか覚えていない幻の曲。DVD化された際にはカットされていて、曲自体もCD化はされていない。 


 この曲は『ビッグ・ウエンズデー』の大半のファンからは酷評を受けていて、芸能人水泳大会の大磯ロングビーチで流れるような歌でせっかくの映画がブチ壊されたと、当時の大半の観客が怒り心頭に達したと言われているのだが、当時中学校3年生だった僕は、この映画が好きで2回観に行ったのだが、僕の中では『ビッグ・ウエンズデー』=「こころに海を」なのである(笑)。
 


 『ビッグ・ウエンズデー』というのは本当にいい映画だった。カリフォルニアの海岸に水曜日にやって来るという伝説の波を「ビッグ・ウェンズデー」と呼び、3人のサーファーの心模様とともにカリフォルニアのサーファーたちの夢の象徴としている。

 そこにベトナム戦争がからみ、心が傷ついた若者が自暴自棄になるのだが、仲間たちによって救われるという、巨大な波=青春の象徴として描いたジョン・ミリアス監督の素晴らしいアメリカン青春ストーリー。





 ちなみに僕は1983年からカリフォルニアの海辺の街に住んだのだが、大学生の大半がサーファーで、まさにこの映画のような青春を送っている奴がいっぱいいた。
 僕ももちろんサーフィンをするようになったのだが、そのきっかけはこの映画だった。

 残念ながら水曜日の伝説の波はやって来なかったが、この歌を聴きながらこの映画の世界をリアルに感じられたことは今でも脳裏にしっかりと刻まれている。




 川崎龍介というシンガーが出した曲は多分この1曲だけだけだったと思う。デビュー前には加山雄三の付き人をやっていた関係でこの曲をリリースしたという風に記憶している。

 なにせ加山雄三は自分でボードを作って日本で初めてサーフィンをやった人だったから、本来なら加山雄三がエンディングテーマを歌ってもおかしくないのだが、さすがにそれだと「海の若大将」になってしまうので、元付き人だった川崎龍介にお鉢が回ってきたのではないかと想像している。

誰か、加山雄三に聞いてみてくれ(笑)。



 ちなみにこの曲のアレンジは松田聖子、佐野元春など数々ヒット曲のアレンジを担当した今は亡き大村雅朗さんがやっている。

 『ビッグ・ウエンズデー』ファンの皆さんには申し訳ないのだが、カリフォルニアの波の記憶と共に刻まれてしまったこの曲は、やはり僕の中では『ビッグ・ウエンズデー』のテーマソングなのである。