「問題を読んだところで終わりにするとか、問題は解いておいて答え合わせをしないでやめると、『なんだかモヤモヤしたもの』が胸の中に残ります。答えが気になって次の勉強時間が待ち遠しく感じられ、机についた途端に前回の続きにとりかかりたくなるというわけです」

 

嶋津良智(「目標を『達成する人』と『達成しない人』の習慣」)

 

この本は目標達成に向けた分かりやすい一冊なのだが、その中で気になったことがある。

それが『ツァイガルニク効果』と呼ばれるものだ。

 

ドイツの心理学者であるクルト・レヴィンは、「人間の記憶は達成された課題よりも、達成されなかった課題や中断している課題が記憶に残りやすい」と考え、このレヴィンの考えに基づいて、旧ソ連の心理学者ツァイガルニクが行った記憶に関する実験で実証されたのが、「未完の課題についての記憶は、完了した課題の記憶より、思い出しやすい」という、ものだった。

中途半端なところで終わらせることによって起こる効果、それが『ツァイガルニク効果』と呼ばれるようになった。

 

この考え方を元に嶋津氏が提唱するのが、「仕事も中途半端にして翌日に持ち越したほうが、効率よく進められる」というものだ(笑)。

普通の目標達成術の書籍ならば、「翌日に課題を持ち越さない」「その日の仕事はその日に終える」というものが一般的だと思うのだが、敢えて人間の心理を応用して普通の目標達成術とは逆のことを言う。

 

「目標を達成する人はあえて消化不良にするが、ダメな人はひたすらやりきる」

 

好きな女性を食事や映画に誘って、思わせぶりな態度でその日は「バイバイ」とされるとますます追いかけたくなるものだ(笑)。

何事も完璧にこなしてしまう相手よりも、ちょっとドジな方が気になってしまって惹かれたりするのも同じ効果だそうだ。

TVドラマの予告編で、次回の映像をちょい見せされるとつい気になってしまうものだ(最近はCM前にミニ予告をやりすぎだが)。

 

普通はその日のうちに仕事や勉強をやりきるのが良しとされるが、敢えて「モヤモヤ」を残すことで目標達成が楽にできるようになる便利な方法こそが、この『ツァイガルニク効果』なのだそうだ。

 

目標達成に向けてしっかりと計画し、スケジュール通りに進めば目標が達成できるとわかっていても、ふと怠け心が顔を出すのが人間というものだ。

「1日くらいやらなくともいいか」「明日、頑張ればいいよね」などと怠け心が出始めたら、あっという間にスケジュールは狂い始め、目標達成もゆらぎ始める。そうなるのを防ぐには、「今日終わらせるべき分を、あえて終わる一歩手前くらいで止めてモヤモヤさせておく」のだそうだ。

 

やり残したことがあると、なんだか消化不良のようでスッキリしないが、逆に「残っている仕事を早く終わらせてすっきりしたい」という心理が働く。このやり方のいいところは、次の日の朝「今日は何から始めればいいか?」と考えなくても、すぐに仕事を始められる点だ。自然とスタートダッシュがかけられる、というわけだ。

 

まぁ、この方法が誰にも当てはまるかどうかは知らない(笑)。

だが、この「寸止め」達成術がフィットする人もいるかも知れない。ぜひ騙されたと思って試してみていただきたい。