「正直者のほうが将来、絶対に伸びるんです」 

寺田和正

 

サマンサタバサの社長の寺田氏には、社員を採用するうえで”これだけは譲れない”という条件がある。

 

それは嘘をつかない人」だそうで、この部分は「絶対にはずせない条件」と言っている。

しかし、採用時の面接だけで嘘つきかどうかをそんな簡単に見極められるものなのだろうか?

 

寺田氏は「何万人も面接してくると、ちょっと話しただけで、簡単に相手の嘘が見抜けてしまいます。嘘は言葉の端々に表われますし、瞳の動きにもストレートに表われます」と語っている。例えば、「私、ファッションが大好きなんです」といっておきながら、実際にはシワクチャの服を着ていたりすると、言行不一致でアウト!となるそうだ。そして人間は嘘をついていると、必ず目の挙動に表われる。

 

メールの文章も同じで、大量のメールに接していると、言葉の使い方や文章の構成の仕方で、その人の考え方が見え隠れする。

寺田氏もいうように、大量の数を経験すると、人間の行動パターンは意外と簡単に想像できるようになってしまうのだ。海外ドラマのFBI捜査官の話みたいだが、わかる人にはわかってしまう。だから嘘はつけない。

自分では上手く嘘をついたと思っていても、相手にはバレているということだ。

 

サマンサタバサのようなファッション系の業界に限らず、どの業界であっても結局は「ヒト」だ。もう単純な話で、ビジネスというのは、なんだかんだいっても人と人の関係で成り立っているから、いちばん大切なのは「人の心」と「信頼関係」なのだ。だからこそ「嘘つき」はダメなのだ。社だでけの嘘ならまだ救われるが、社外や取引先の人間に嘘をついてしまうと、もう個人レベルの話ではなくなってしまう。

 

寺田氏はインタビューで本日の言葉の前段として、

「僕は、”会社に10億円の利益をもたらす嘘つき”を採用するくらいなら、”2億円の損失を与える正直者”のほうを選びます。2億円くらい僕がカバーしてみせる。その代わり、・・・」として本日の言葉を続けて語っている。

 

希望する会社に就職するのも、素敵なパートナーと結婚するのも「ゴール」ではなく、スタートにすぎない。だからこそ、嘘をついてスタート地点に立ってはいけないのだ。相手と自分が信頼関係で結び付けないと、結局はその場しのぎの関係になってしまい、そんな関係では長続きはしない。だからこそ、正直に言い合える関係を構築できるか、それがコミュニケーション上の最大のポイントだ。

 

嘘も方便とはいうが、すぐにバレて関係が崩れるくらいなら、バカと言われてもいいので、正直に生きた方が得策となる。結局は、「急がば回れ」なのだ。