「ビジネスマンが生き抜くために必要な最大のスキルは『0から1を創造する力』、すなわち『無から有を生み出すイノベーション力』だと考えている」
大前研一
これは大前氏の最新刊、『「0から1」の発想術』の前書きに書かれている言葉である。「アップル」のスティーブ・ジョブス、「マイクロソフト」のビル・ゲイツ、「アマゾン」のジェフ・ベゾス、「Google」のセルゲイ・ブリンとラリー・ペイジ。彼らはみな「個人」からスタートし、イノベーション力で世界を変えた。そう、一個人が世界を変えたのである。
イノベーション力で世界を変えたこうした人たちのことをいまさら語るのには意味がある。それは、21世紀の現在の世界は、富を創出する源泉が、国家ではなく「個人」に移ってきているからだ。既に国家という枠組みは過去のものとなり、「一個人が世界を変える」時代となっているのである。
「そんな大そうなことを言われても・・・」と言われるかもしれないが、別に大企業に属してもいない、東欧とロシアから移住してきた学生だった2人が作ったGoogleは、2015年の時価総額は50兆円にもなった。かたや大企業だったはずのシャープは台湾の企業に安い金額で売られてしまう。
仕事がら音楽業界との付き合いが多いが、大企業病にかかっているレコード会社は、もはや風前の灯となっていて、アーティストをプロモートさせるためのイノベーションとなるようなクリエイティブなアイデアは全然出てこない。この3日間に大物アーティストたちのメネージャーと会話をしていても、もうレコード会社には期待していない。単純にCDを流通させ、販売促進をすることだけが期待され、それ以上のことは期待されていない。
音楽業界全体の市場規模は、既に豆腐業界よりも小さい(笑)。シャープの話しもそうだが、「世界の亀山モデル」などと自分で言ってしまったところから凋落が始まった。大企業が、自分たちの都合と自分たち側の発想だけで商品を売ろうとするから、ユーザーはシャープを選択肢からはずした。
音楽の世界も一般企業も同じで、業界という枠を飛び越えた発想、新たな価値を創り出そうとした個人がこれからの時代を引っ張る。だからこそ、これまでの常識は無視して、自分が面白がれるアイデアを発想して実行すること、それをする個人に求められている。
2016年4月7日記述