評価
1. ストーリー構成と展開 ...8
2. キャラクター描写と演技力 ...10
3. テーマ性 ...8
4. 心理描写 ...10
5. 脚本 ...9
6. 映像演出 ...7
7. 音楽...7 
8. 空気感・緊張感の演出 ...10
9. テンポ・編集 ...9
10. 結末・余韻...10

計88点

先に言う。
名作だ。
タイトルの付け方が、もう完璧。

「ゆれる」。
この二文字に、映画のすべてが入っている。

視聴者の心が揺れる

オダギリジョーの心が揺れる

吊り橋が揺れる

真実が揺れる

兄弟の関係が揺れる


ただし――
揺れないのは兄貴(香川照之)の心だけかもしれない。
そこが恐ろしくて、魅力的で、映画を支配している。


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観ている間ずっと、
物語はゆっくりと揺れながら誰の味方をすればいいのか分からなくさせてくる。
事件の真相はシンプルなようで曖昧。
兄弟の距離が近いようで遠い。
優しさなのか、支配なのか、愛情なのか、執着なのか――
全部がギリギリのラインにぶら下がっている。

その不安定さが、観る側の心を吊り橋効果で乱してくる。
気づけばこっちまでオダギリジョーと一緒に揺らされている。


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そしてラスト。
やるせない。
答えがない。
救いもない。

なのに、そのまま突き進んでくる。
心を揺らしたままエンドロールがくる。

終わってみれば――
香川照之の顔だけが残る。
あの顔、あの目、あの“揺れなさ”。
それが、この映画の中心であり影だ。