『メメント』




評価


1. ストーリー構成(逆行構造・時系列操作) – 時系列が逆行するカラーシーンと順行するモノクロシーンが交錯しながら収束する構造の巧みさ

★9

2. テーマ性(記憶・アイデンティティ・復讐) – 記憶と自己認識の不確かさ、復讐の虚無、目的のすり替わりの深さ

★9

3. キャラクター描写と演技力 – レナード(ガイ・ピアース)の混乱、テディ(ジョー・パントリアーノ)、ナタリー(キャリー=アン・モス)の多面性

★9

4. 脚本とセリフの緊張感 – 主人公の制約を観客も共有しながら進むセリフ構成とミスリードの使い方 

★9

5. 編集技術とテンポ – 記憶の断片を疑似体験させる編集、短編記憶の切断感と緊張感 

★10

6. 映像演出・撮影技法 – カラーとモノクロの使い分け、記憶の不確かさを表現するカメラワーク 

★8

7. 音楽・音響の演出力 – デヴィッド・ジュリアンのスコアによる不穏な空気の演出 

★8

8. 謎解き・サスペンスの質 – 観客が「主人公と同じ目線」で真実を追う面白さと衝撃の展開

★10

9. 象徴性・小道具の活用 – ポラロイド写真、タトゥー、メモなど記憶代替物の象徴的な使い方 

★10

 10. 結末のインパクトと余韻 – 真実の露呈と“復讐が目的であり続ける”虚無感が残す深い余韻

★10


計92点


『メメント』――私はこれを一度で理解できるほど賢くない正直に言います。


私は頭が良くないので、1回観ただけで『メメント』を理解することはできませんでした。 


2回目でようやく、「で、主人公の目的は果たせたのか?」という問いに辿りつけた程度です。 


これを1回観ただけで「なるほどね」と理解できたあなたがいるのなら、私は心からあなたを尊敬します。 


観たのは大分前なので記憶が曖昧ですが、悪人の言葉を信じるならば、主人公の目的――復讐は達成されたことになる。 


でも、この映画の凄いところは、「全てが正しいようにも、全てが間違っているようにも見える」描き方をしているところです。 


だから、結局のところ“復讐は果たされたのかどうか”でモヤモヤし続けてしまうのです。 


ただ、もし素直に捉えるなら、復讐は果たされたのでしょう。 


そしてそれでいいのかもしれません。 


でも、この映画のトリックの素晴らしさは、 「その答えすら人によって違う」ところにあるのだと思います。 


 私はサスペンスや推理物の“解説厨”にはなりたくないので、これ以上は言いません。 


ただひとつだけ。 


もし未見ならば、何も調べず、何も知らずに観てください。 


そして終わったあと、あなたなりのモヤモヤを味わってください。 


『メメント』は、観終わってからが本番。 


脳内で何度も再生され続ける映画です。