『火垂るの墓』




評価


1. ストーリー構成(展開・感情の流れ)
 – 開始時点で結末が明かされる構成、回想形式によるドラマ性の高さ 

★9

2. キャラクター描写と演技力(声の演技)
 – 清太と節子の兄妹関係、子どもらしさと時代の過酷さの表現力 

★10

3. 演出(感情表現と抑制のバランス)
 – 悲劇を押しつけずに、静かな演出で観客の感情を揺さぶる手法 

★9

4. 映像美とアニメーション技術
 – 美しい自然描写と破壊された都市の対比、火垂るの儚さの演出 

★10

5. 音楽・音響の使い方
 – 久石譲による音楽や、沈黙・生活音のリアリズム 

★8

6. 戦争描写のリアルさと象徴性
 – 直接的な戦闘ではなく、“生活の崩壊”を通して戦争の本質を伝える 

★10

7. メッセージ性(戦争・家族・命)
 – 子どもたちの姿を通して訴える“戦争が奪うもの”の重さ 

★10

8. 社会背景・時代描写の深さ
 – 配給制度や都市空襲、地方の疎開など、史実への丁寧な視線 

★9

9. 子ども視点の一貫性
 – 清太と節子の目線で見える世界の限界と純粋さのバランス 

★9

10. 結末の衝撃と余韻
 – 観る者に重くのしかかる結末と、それでも描かれる光の儚さ

★10


計94点


『火垂るの墓』は、私にとって 『ダンサー・イン・ザ・ダーク』と並ぶ、“二度と観たくない傑作”です。 


一度観れば、もう十分。 


 けれど、不思議なことにYouTubeでレビュー動画を見かけると、
つい見入ってしまい、そして一緒に涙してしまうのです。 


この映画が素晴らしいと思う点は、
敵を一方的に“悪者”として描いていないところ。 


アメリカの存在は背景に過ぎず、そこにあるのはただただ、戦争がもたらす無慈悲な悲劇。 


誰かを責める映画ではなく、“何が失われたのか”を静かに描いている映画です。 


 私が子どもの頃に初めて観たとき、
おばさんは完全に“悪役”に見えました。 


でも大人になってから観ると、そう簡単に断罪できる人物ではないのだと気づきます。 


彼女なりの正義や苦しさがあったことも、今なら少し理解できます。 


それでも、家を出ていくふたりを引き止めなかったことだけは、
やはり胸に引っかかり続けるのですが。 


今、私には小学生の子どもがいます。 


この子が大人になるまでは、
どうか戦争のない時代が続いていてほしいと願います。 


 でも――
孫の時代はどうだろうか。 


世界はどこへ向かうのだろうか。 


その不安は、いつまでも尽きることがありません。 


願わくば、私が死ぬとき、
そんな不安を胸に抱かずにすむような、
そんな世の中になっていますように。