『道』




1. ストーリー構成と展開
 - 巡業の旅の中で展開する、人間関係と内面の変化の描き方 
★10
2. キャラクターの描写と演技力
 - ゲルソミーナの純粋さ、ザンパノの不器用な感情、道化師との対比など 
★10
3. 演出とフェリーニ的視点
 - 現実と寓話のあいだを行き来する詩的な視点と演出 
★10
4. 映像美と象徴性
 - 荒涼とした風景、サーカスの美学、孤独と自由を象徴するショット 
★10
5. 音楽(ニーノ・ロータ)
 - 哀愁を帯びたテーマ曲と、キャラクターの心情に寄り添う旋律の力 
★10
6. テーマ性(孤独・愛・救済)
 - 孤独な魂が交差し、わずかな繋がりの中に人間の救いを見いだすテーマ 
★10
7. 時代背景と社会描写
 - 戦後イタリアの貧困、放浪、希望のなさといった社会的要素の反映 
★10
8. セリフと静寂の使い方
 - 必要最小限の言葉と沈黙によって伝えられる感情の豊かさ 
★10
9. 編集とテンポ
 - ゆったりとした時間の流れがキャラクターの内面とリンクしているか 
★10
10. 結末の余韻と象徴的強度
 - ザンパノの涙と波音、無言のカタルシスが観客に残す深い印象

★10


計100点


『道』


記憶を消して、もう一度だけ観たい映画 


もし、ひとつだけ記憶を消してもう一度観られる映画を選べるなら、
私は迷わずこの作品を選ぶかもしれない。 


フェリーニの『道』。 


 私にとっての“キング・オブ・ムービー”。 


中学生のときに出会い、衝撃を受けた。
今思えば、あの年齢で観たのが早すぎたのか、むしろ遅すぎたのか、それは分からない。 


でもただ一つ確かなのは、「死ぬ前に出会えてよかった」ということだ。 


この映画には、善人と悪人が登場する。 


いや、そう見える。 


でも観ていくうちに気づく。 


“悪人”とされる者も、決して心から憎めない。 


不器用で、粗野で、傷ついていて、だけどどこかに“人間の純粋さ”が残っている。 


それは、善とも悪ともつかない、ただの“どうしようもなさ”かもしれない。

登場人物たちは皆、どこまでも未熟で、だからこそ残酷で、そして愛おしい。 


その“純粋さ”が、善でも悪でもなく、ただ人間らしいということが、
観終わった後に、胸の奥を静かに締めつける。 


「正義の反対は、別の正義」
矛盾するようでいて、真実のような気もする。 


この映画は、その言葉を物語として体現している。


そして、あの音楽が流れるラストシーン――
あれを初めて観たときの感情は、一生忘れない。 


もう一度、初めての気持ちであのシーンに出会えたらどれほど幸せだろう。


いつか、静かな夜にもう一度、
 記憶を失って観てみたい

『道』は、映画という言葉では足りない。 


これは人生の断片だと思う。