映画『桜桃の味』




評価



1. テーマ性(生と死の哲学)
 - 生きる理由・死の意味といった問いかけの深さ、観客への余白の与え方 

★6


2. ストーリーの構成(ロードムービー的進行)
 - 主人公が車で人を探しながら繰り返される会話の中に生まれるドラマ性 

★5


3. 演技力と自然さ
 - 主人公(ミスター・バディ)と出会う人々のリアリティ、素人っぽさを含めた説得力 

★6


4. 対話の深度と余韻
 - 哲学的・詩的な会話が観客にどこまで届くか、沈黙の使い方 

★6


5. 映像美と構図(自然・都市・人)
 - 無駄のない構図、イランの風景、砂埃や木々の表情の意味づけ 

★8


6. 音響と静寂の演出
 - 音楽をほぼ排除し、風や足音など“生活の音”だけで紡ぐ静かな時間 

★9


7. テンポと没入感(退屈さとの紙一重)
 - ゆったりとした展開が瞑想的か、あるいは観客を突き放すか 

★7


8. 宗教・文化的背景の取り込み方
 - イランにおける死生観や倫理観を反映した対話や表現 

★5


9. ラストの解釈の余地(メタ構造)
 - 最後に挿入される“撮影風景”の意図と、作品全体の意味の揺らぎ 

★5


10. 挑戦性と映画的革新
 - 物語や感情ではなく“問い”を見せるという、キアロスタミ流の表現の独自性

★7


計64点


『桜桃の味』


~プレ値じゃなくてよかった命の値段~

昔はDVDがプレミア価格で、手が出なかったこの映画。


今ではPrime Videoでワンクリック。 


ありがとうサブスク、ありがとう令和。 


そんな“いい時代になったなあ”としみじみ思いつつ、
「よし、久しぶりに観るか」と再生ボタンを押した私。 


 …ところが、あれ?
高校生の時に観たときの、あのズシーンと来た感じが…こない。 


心が鈍ったのか、感性が枯れたのか、ただの老化か。 


いや待て、これ…もしや成長ってやつか?(違う) 


でも、観終わって思ったんです。 


「プレ値で買ってたらちょっと凹んでたかも」って。 


 さて、中身の話をすると──
自殺願望のある男が「自分が死んだあと、穴に土をかけてくれる人」を探して街をさまよう物語。 


…って冷静に考えると、「いや、自分で死ぬ気あるなら人を巻き込むな」というツッコミが先に出てしまう。 


でも、そこを突っ込まずに観ると、この映画、妙に優しい。


人を探すたびに人生哲学がチラッと見えて、
最終的に“生きること”そのものについて問いかけてくる。 


派手な展開も音楽もない。 


ひたすら車と男と静寂。 


だけど観ているうちに、なんとなく自分の生活まで静かになっていく。 


 そして観終わって気づく。


「心が元気なうちに、いろんな映画を観ておこう」って。 


あの頃感じた心の揺れが薄れていたとしても、それでも、今の自分で観る価値はある。


あとやっぱりプレ値じゃなくてよかった