試着室 | 不思議サロン

不思議サロン

怪談奇譚不思議のブログです。

20年ぶりに会った友人から聞かせて頂いた。

 

「不思議な話って言うか、

 

何が何だか分からない話なんだけど良い?

 

オチとかないよ」

 

いやいや、芸人さんではあるまいに

 

オチは期待しておりませんがな。

 

「大丈夫大丈夫、不思議な話が好きだから

 

聞かせて」

 

言うと、彼女は語り出した。

 

「ほら、私大学行った後にさ、

 

看護学校に入り直したじゃない。

 

だけど、結構グダグダしててさ、

 

ちゃんとお勤めし出したのが

 

30前だったのよ。

 

でもさ、結局向いてなかったんだね、

 

ある事がきっかけですぐに辞めちゃったのよ。

 

救急の外来で働いていた時の話なんだけどね。。。」

 

 

友人の話しはこうだった。

 

 

救急で男性が運ばれて来た。

 

交通事故だったらしく

 

ほぼ心肺停止状態だったそうだ。

 

まずは、患者の衣類を脱がす事をするのだが

 

ここで友人は大きなミスを犯してしまう。

 

ハサミで衣類を切って行くところを

 

友人は男性が履いているジーンズのボタンを

 

外して脱がしてしまったのだ。

 

 

 

脱がしたジーンズと一緒に、

 

 

男性の右足が

 

 

身体から離れてしまったという。

 

 

 

何やってるの!!!

 

先輩看護師の怒号が虚しく現場に響いた。

 

結局、男性はそのまま亡くなってしまった。

 

足が取れてしまった事が

 

直接の死因ではないから、と上司から

 

言われたのだが、彼女は責任を感じたのと

 

あまりの恐怖で仕事に復帰する事ができず

 

辞めてしまった。

 

数年経っても友人は、看護の現場には

 

戻る事ができず、

 

メンズとレディースの商品を扱う

 

カジュアルなショップで働き始めた。

 

ある日、松葉づえをついた男性客が現れて

 

試着して良いかと聞いて来た。

 

もちろん良いので、

 

「どうぞ」と言って試着室のカーテンを開けて

 

男性客に入って貰った。

 

松葉づえなのだが、

 

男性客は器用に試着室に入っていった。

 

カーテンをピシャっと閉めたとたん、

 

全身に鳥肌が立った。

 

何?

 

さらに、

 

病院特有の消毒の匂いが鼻を刺した。

 

瞬間、友人は件の出来事を思い出した。

 

今のお客さん、右足が不自由だった。

 

まさかっ。。。

 

あの時の患者さん?

 

いやいや、亡くなったはず。

 

閉ざされたカーテンの向こうにいる客が

 

あの時の患者さんだったら。。。

 

怖い。

 

男性客が声を掛けて来たらどうしよう。

 

「おはようございまーーす」

 

遅番のスタッフが笑顔で近づいて来て、

 

勢いよく男性客が入っているであろう

 

試着室のカーテンを開けた。

 

「あっ」

 

制止する手は間に合わず

 

試着室のカーテンは開いてしまった。

 

キャッ 友人は思わず両手を顔にやり

 

試着室から目を背けた。

 

「○○さん(友人の名前)、どうしたんですか?」

 

言いながら遅番のスタッフはその場から

 

立ち去ってしまった。

 

見ると、試着室には誰もいなかった。

 

何が起こったのか全く分からず

 

しばらく呆然と立ち尽くしてしまった。

 

たった今入った客は?

 

松葉杖は???

 

 

 

 

 

「ね、訳の分からない話でしょっ。

 

そのお客さん、消えちゃったんだよ。

 

あの時の男性患者と関係あるのか。

 

試着室で、何故、あの患者さんの事を

 

思い出したのかも、分からないんだよねぇぇ」

 

 

こんな話を聞かせて貰った。

 

カーテン一つ挟んだ向こうにいるものが

 

得体の知れない存在だと想像すると

 

もうカーテンは開けられない、

 

怖い話である。

 

ポイントは遅番のスタッフさんで、

 

閉まっているカーテンを容易に開けたという事は

 

確実にそこに客がいない事が分かっていた、

 

という事は、友人が見た松葉杖の男性客は

 

友人にしか見えていなかった、という事では

 

ないだろうか。

 

よって、それは幽霊だ!

 

「やだぁぁぁぁ」

 

友人は苦い顔をして言った。

 

でも、現実の人が忽然と消えてしまった、

 

というよりは得心が行く。

 

ただ、何故そこに、そのタイミングで

 

現れたかは不明である。

 

 

 

いつも読んでくれて、ありがとうございます。

 

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