残響と夢 | 紫の吟遊詩人~月の影にて~

紫の吟遊詩人~月の影にて~

徒然なるままに今思う事を綴っていきます。




昨日、渋谷で行われたこのライヴ。
綾織綾音さんの生誕祭(平日だろうとなんだろうと誕生日当日にやらなければ意味がない…という綾音さんの信念に心から敬意を表している)

会場入りして、いつも誰のライヴでも行うように目を瞑り自分の音楽を聴きながら集中力を高める。

どこかでも書いたがライヴは送り手(アーティスト/バンド)と受け手(観客)のキャッチボールであり、感性のガチンコ勝負でもある。

だから、席に座るといつも集中力を高める為に目を瞑る。

そして、ライヴが始まった。

いつもの様に物語を読みながらそのシチュエーションに合った曲を演る。

最初からピーンと張り詰めた緊張感が会場を支配する。

半年毎に綾音さんのライヴを拝見させて頂いているが…成長速度が止まる気配が全くない。

声量、表現力…昨年12月より更に成長している。

特筆すべき事は…

その眼力。

妖艶な目付きで歌う綾音さんの姿に俺の理性を丸ごと絡め取られ、別の次元に落とされるんじゃないか?というある種の恐怖が頭をよぎったのは1度や2度ではない。

メイクはあくまで引き立てるもの。あの妖艶な目付きは綾音さんの力で生み出されていたからこそ、これ程のリアリティを伴って俺の感性を揺さぶる…甘い、がしかし危険な匂いのする誘惑…。

近付いたら最後、無数の薔薇のような棘で身体中傷だらけにされそうな誘惑。

その傷だらけの姿を哀れみでもなく、嘲笑っているわけでもない何とも言い難い笑みを浮かべる綾音さんを容易に想像していた。

他の方は曲間で水分補給をしていた。そりゃそうだろう、こんな緊張感のあるライヴなんてそうそうあるものではない。

俺は水分補給を摂ることさえ出来なかった。身体が硬直して動かない、動けない。

身体も心も少しずつ、少しずつ重りをぶら下げられたかのような重みを感じていた。

そんな中でも人間の業を身体を振り絞って歌う綾音さんの姿に涙していた。

痛々しさすら感じた。それくらい曲の世界に入り込む。何かが綾音さんの中に降りてきているのか?と思いながら観ていると自然に涙が浮かんでいた。

ライヴのタイトル通り、自分の抱えていた夢が
ガチャーン!と割れた音が残響となって物語は終わった。

重くシュールな物語。

本編が終了してホッと息をついた瞬間、再び綾音さんの描いた世界が今度は映像となって飛び込んできた。

挑発するような妖艶な目付き、魂を力付くで抜かれたような目付き。着物姿で髪を振り乱しながら舞い踊る姿に圧倒された。

やっと素の綾音さんが登場した。
戻りたかったような戻りたくなかったような現実の中に綾音さんは現れた。

今回の作品の背景やライヴのコンセプトを綾音さんが話しているのを聴いて俺は綾音の思惑通りに綾音さんの手のひらの上で転がされていたのがわかった。

それをいとも簡単にやってのけるのだから、“アーティスト”綾音さんには畏怖の念しかない。

最後に綾音さんが歌ったのは綾音さんが再出発した最初の曲であり…綾音さんと俺が音楽で繋がった初めての曲。

思わず一緒に口ずさんでいると再びじわじわ涙が出てきた。

やはり「曲」は聴いた時の自分の状況や心境、思い出を封じ込める水晶玉のようなものだ。

この曲を手にした時の嬉しさ、何度も繰り返し聴いた日のこと、その時の天気まで…封じ込めてあった。

それが頭の中に浮かんでくる。綾音さんとの思い出と共に。
口がカタカタと震え、涙が止まらず滲んでくる。

凄いライヴだった。近くに座っていらっしゃったお2人の会話からも伝わってきた。

圧倒的な世界観をここまで身体と 歌で表現出来るアーティストはどれだけいるのだろう。そして綾音さんは聴き手に「考える」音楽を提供してくれる。様々な事を考えさせられる音楽。俺の大好きな部類だ。俺はよく「考える」ROCKを聴いているからだ。

考えて導き出された結果は全て正解。
1人1人の感性に正しいも間違っているもないからだ。

半年後と言わず、もっと早くライヴを観たい思いに駆られている。

どうやら俺はこれから一生綾音さんの音楽によって手のひらで遊ばれ続けることになりそうだ。

それもまた一興。

どう生きるか、も十人十色。
1人1人違って当たり前なのだから。

俺の場合は、「どう長く生きるか」ではなく「どうやって太く短く生きるか」だからな。


ライヴが終わって物販に現れた綾音さんも、俺が知っている明るくて優しくて楽しい綾音さんだった。


つい数分前まで狂気さえ孕んだ雰囲気を纏い、妖艶な目付きでマイクを握り締めていた“アーティスト”

綾音さんではない。


いつも、素敵な笑顔で俺を迎えてくれる綾音さんがそこにいる。


やり切った!という満足感があったのだろう。


俺も満たされた気持ちで会場を後にした。


綾音さん、本当に凄いライヴを魅せてくれてありがとうございました!