両親からの愛情を受けていない俺は、何かに救いを求めていた。自分が自分でいられる場所を探していた。
見つけた場所は音楽。
気に入ったものなら何でも聴く姿勢も最初から。
まぁHM/HR・ロックンロールにハマった時はその素晴らしい世界にハマって抜け出すなんて考えてもいなかったが。(苦笑)
3週間程前、あれから39年目にしてやっと観ることが出来た。
Y&T。
何度もその機会がありながら観ることが出来なかったライヴを遂に目の当たりにすることが出来た。
初めて買ったアルバムは「Down for The count」
確かに当時持て囃されていたLAメタルに近づいた音ではあるが、彼等らしい叙情味満点の曲もある。
何しろデイヴ・メニケッティの熱い歌声とギターが素晴らしかった。
初期の名作「EARTHSHAKER」と「MEANSTREAK」は…高校の修学旅行先の京都にあった中古盤屋で手に入れた。
「Black Tiger」だけはCD化されてからだったので数年後。
アメリカのバンドらしい豪快で明るさ…より英国/欧州風の叙情味溢れる曲は衝撃的だった。
そんな記憶を思い返しながら待っていると…「From The Moon」が流れる。
遂に始まった。
ゆっくりとデイヴが出てくる。笑顔で手を振りながら。
そしてスタートした「Open Fire」
文字通り、俺の心にも火がついた。
何しろ、デイヴのギターは勿論情念を音に替えた熱いものだったのだが…
その歌声の若々しく、瑞々しいこと。
御歳70歳だなんて信じられない。
「50周年だよ!」と伝え、自分からヨロヨロしだす。(笑)
2日目では3曲目が終わった辺りで早速水分補給をした。これを観た観客の1人が「疲れた?」と尋ねる。デイヴは笑いながら「いいや。君は疲れたの?」と余裕で返す。観客が「デイヴ!」と呼べばその度に「YES!」と返事をかえす…好い人すぎる。(笑)
和やかさも漂わせていたが、中盤で一気に流れを変える。
「Midnight In Tokyo」
何回聴いたかわからない。その度に涙腺が刺激される。ラジオで流れた時も既に聴いていたのに泣きながら聴いた。
そして今回のライヴでも。
2日間行って2日連続で泣いた。
初来日の印象を日本への感謝と併せて書いた曲。
デイヴのギターは哭きまくり、その歌声は誠実で真っ直ぐ聴く者の心に届く。
曲が終わると拍手は鳴り止まず更に「Y&T!」コールがそれに続く。デイヴは嬉しそうな表情でガッツポーズや拍手でそれに応えていた。
50周年ライヴなので、各アルバムから1曲は披露したのでダレることがない。
メジャーレーベルに移籍したものの、レーベルからの無茶振りに応じ、外見を派手にしたのみならず音の核を担っていたレオナードを(恐らく)半ば強制的に辞めさせた。それが響いて逆に人気は思うように上がらず…レーベルから契約切られたのとほぼ同時期に一旦解散する。
何故?
1990年だったと思うが…リアルタイムでこの報せを知った俺は困惑したし動揺した。
メジャー時代のアルバムも良い曲が多いと思っている。ちゃんとプロモーションをすればそれなりの結果は出たはず。
外野の俺がとやかく言うことではないし、実際は違うのかもしれないが、メジャーレーベルはY&Tに何のフォローもプロモーションもしなかった。同じレーベルには白蛇やAerosmithも在籍していたので一緒にツアーさせれば充分やれたはず…なのに、何もしなかった。
悔しかった。ただ、ただ悔しかった。
数年後に再結成した…が、なかなかレーベルとの契約は上手くいかなかったのだろう、現時点の最新作はもう10年以上前のもの。
それでもデイヴは自分の出来ること…ライヴを精力的に行った。日本にもコンスタントに来てくれた。
観ることは出来なかったが、来日公演を行ってくれるだけで嬉しかった。
せっかくの50周年記念ライヴも1300人強の会場だったのは複雑な心境ではあったのだが。
そんな色んな感情を一気に涙にかえたのが…
2日目の「I Believe In You」
終盤のデイヴのギターソロは真に魂の音だった。
俺の頭の中は真っ白になり、ただただ涙を流すしかなかった。
ライヴでのアドリブによるギターソロで俺が涙を流したのは3人(回)だけ。
1997年Blackmore’s Nightにおけるリッチー・ブラックモア。
2010年のゲイリー・ムーア。
そして今回のデイヴ・メニケッティ。
アメリカとアイルランドが誇る人間国宝2人のギターソロに涙を流したことは良い思い出になった…思い残すことはないくらいに。(笑)
一気に盛り上がったライヴ終盤とアンコール。
アンコールは2日間とも1度では終わらず2度も演ってくれた。初日の2度目のアンコール…かつてRAINBOWがやったように客電がつき、終演アナウンスが流れる中で
メンバーが現れ、会場は蜂の巣を叩いたような大騒ぎに。
俺の後方にいた観客の方が「デイヴ、漢だ!」と叫んでいた。
本当にその通りだと思った。
1曲目は決めていたのだろうが、その後の曲は…ステージ上でメンバーが話し合い、軽くギターを合わせただけで演ってのけた。
デイヴは「間違えるかもしれないなぁ」と言っていたがミス1つない完璧なものだった。
帰路につきながら、「本当に凄いもの観ちょったなぁ」「一体どこからあんなエネルギーが出るんだ?」「なんだ、これは?ヤバ過ぎるだろ!」という思いを繰り返した。
メンバーのソロタイムは一切ナシ。デイヴも含めてメンバーは約2時間半出ずっぱり
それでも疲れた顔は一切見せず笑顔で歓声に応えていた。
動画等の書き込みを見ると海外のファンの方は異口同音にして
「アメリカで最も過小評価されているバンド」
と仰る。(個人的にはRIOTもだが)
そりゃそうだろう。
これだけ佳曲・名曲・神曲があり、ライヴも凄いのにアメリカでもツアー会場は小さなクラブやライヴハウス。
Y&Tはこんな扱いをされるべきではない。
だが、この状況をひっくり返すのは容易なことではない。
今はただ、元気に活動して欲しい。
それだけ。
デイヴは2日目の最後にこう言った。
「僕達は必ず戻ってくる。また会おう!」
信じて待つ。