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Prayers
for Bobby
「どうして死んでからでないと、気づかなかったんだろう。」
私がPrayers
for Bobby を見終えて、いや、シーンの途中から心に引っかかっていた率直な感想だ。この映画は、実話に基づいており、1980年代のアメリカで、子どもをゲイであるが故に否定し、失ってしまう母が中心に描かれている。2009年にLeroy Aaron'sの小説をもとに映画化された。母は、教会で言われている聖書の教えを信じるが故に、子どもを治そうとする。
「私には、ゲイの息子はいらない。」「なら、母さんには息子はいない。」という、会話のシーンが印象的だった。追い詰められたBobbyは死を選んでしまう。母は子どもの死後、ゲイのコミュニティーなどに赴くことで、考え方を少しずつ変えていく。そして、PFLAG(1972年に設立されたレズビアンやゲイの親や家族、友人の団体)などの活動に積極的に参加するようになる。
けれど、なぜ?母が活動したところで、Bobby は帰ってこない。このドラマは、1980年代のアメリカだが、両親からの否定がセクシュアルマイノリティの子どもを悩ませ、死を選択させることは今も起きている。2014年末に自殺した、トランスジェンダーのLeelah Alcornは遺書に「私の死は、今年自殺したトランスジェンダーの一人としてカウントされる必要がある。そして、その数を見て、これはひどい、社会を変えなければと思って欲しい。お願い、社会を変えて。」と書き残している。Leelah Alcornの両親も、キリスト教を理由に、彼女のことを治そうとしていた。なお、あるアメリカでの調査によると、トランスジェンダーの自殺を試みた割合は、全体の平均の4.6%や、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアルの人々の20.1%を大きく上回る41%とされている。
「僕は一年間、母さんの話を聞いてきた。1度くらい僕の話を聞いて!」
このとき、母は聞く耳を持たなかった。
今までの、あなたの、私の基準では、変でおかしくて、治療すべきことなのかもしれない。
けれど、ある人にとっては、私にとっては、同性に惹かれることがごく自然で普通のことなのだ。ぱっと、条件反射で否定する。「治しましょう。」という前に、母がBobby の声に耳を傾けていたらと思わずにはいられなかった。自分にとって、異質のものであったとしても、「もし~」と考えられる余裕、想像力が欲しい。
これだけ、ストーリーがわかっていても、引き込まれる。
なんだか、泣きたい気分のときにはおすすめのドラマ。
見終えた時に、けしてすっきりとはしないけれど。
参考
The
guardian, “Ohio
transgender teen’s suicide note: ‘Fix society. Please.’”
http://www.theguardian.com/world/2015/jan/05/sp-leelah-alcorn-transgender-teen-suicide-conversion-therapy (Accessed: 2015/10/28)
The New
York Times, ‘How
to save your life A response to Leelah Alcorn’s Suicide
Note JAN. 6, 2015 By Jennifer Finney
Boylan’.
http://www.nytimes.com/2015/01/07/opinion/a-response-to-leelah-alcorns-suicide-note.html?_r=1
(Accessed: 2015/10/28)
Findings
of the national transgender discrimination survey, ‘Suicide Attempts among
Transgender and Gender Non-Conforming Adults’ (January,
2014)
http://williamsinstitute.law.ucla.edu/wp-content/uploads/AFSP-Williams-Suicide-Report-Final.pdf
(Accessed: 2015/10/28)