雨宮 処凛『死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで』橋爪 大三郎による書評 | 本のブログ

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久しぶりに、新刊をきちんと買おうと思った。

 

縦割りで不親切な役所の窓口より、ずっと親身に当事者に寄り添っている―雨宮 処凛『死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで』橋爪 大三郎による書評
7/1(月) 6:00配信
著者は九○年代のフリーター。体力気力を消耗し電気ガスもよく止められた。バイトをクビになるたび自分を責めた。でも≪「自殺するくらいならなんでもやってやる!」と…開き直り≫、イラクに行ってライブをやるなど≪怒濤の行動力≫で注目され、文筆の道に進む。以来、困窮者支援をライフワークにする。
家賃払えない、携帯止まった、などお金の問題から、親の介護、急な病気、身内のトラブル、死んだらどうなるまで、よろず困りごとのコンシェルジュ(相談係)だ。本書が素晴らしいのは、多くの公的補助の名称やメリットや条件や相談先を丁寧に説明していること。縦割りで不親切な役所の窓口より、ずっと親身に当事者に寄り添っている。これで九○○円+税は、コスパ抜群だ。
著者は自営で単身で将来が不安。ひとごとでない困窮者の事例を学ぶうち、役立ち情報(死なないノウハウ)ですっかり武装できた。そして≪不安がなくなると、人は優しくなる≫と気づいた。ギスギスした「自己責任」の時代に困窮者に手を差しのべる人びとがいる。この世の中はまだ捨てたもんじゃない。温かな気持が伝わってくる一冊である。
[書き手] 橋爪 大三郎
社会学者。
1948年生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。執筆活動を経て、1989年より東工大に勤務。現在、東京工業大学名誉教授。
著書に『仏教の言説戦略』(勁草書房)、『世界がわかる宗教社会学入門』(ちくま文庫)、『はじめての構造主義』(講談社現代新書)、『社会の不思議』(朝日出版社)など多数。近著に『裁判員の教科書』(ミネルヴァ書房)、『はじめての言語ゲーム』(講談社)がある。
[書籍情報]『死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで』
著者:雨宮 処凛 / 出版社:光文社 / 発売日:2024年02月15日 / ISBN:4334102263
毎日新聞 2024年4月6日掲載