孤独な群衆(リースマン著) | 本のブログ

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普通の人は読まないだろうと思う本を記す。
あとは、Linuxと中古PCなどの話題。

本書はみすず書房1964年刊行のもの。

 

古い本なのだが、読んでいて少し考えたことがある。

それは、アメリカという国を題材に、内部指向型と外部指向型という人間性格的な分類や、内部指向的時代と外部指向的時代という時代性について語られたことと、それを日本という国に当てはめた時に現れたことについてだ。

本書では、人口動態をもとに、人口の増える時期、それは、経済も成長する時期に相当するのだが、それを内部指向時代として、その後、人口の伸びが停滞する時代を、外部指向時代として、ひとつの区分として示す。

その区分が、本書の原書の書かれた1961以前、たぶん、ゴールデンエラと言われた1950年代を画期としていると思われる。

それまでの時代の、内部指向型の人間は、基本的にハードワークで遊ぶことをせず、遊びの変わりにゴルフをするような人々で、プロテスタントの影響が強いという類型のようだが、その後の、外部指向型は、他人の動向を気にして、教条的な権威に反発し、自由や遊びを、そして消費する傾向にある、すなわち、社会が裕福になったので、その余裕を享受する世代だとするのだ。

この分類の下りで一つピンときたのが、内部思考型の人は読書をするというもので、これは、現在の日本の読書人口が、義務教育期の若年層を除くと60歳以上に集中しているという事実と妙な符合がある。

そう、結論として、日本も時間のズレやその時期の長さの違いはあるがアメリカの後塵を拝したのではないかというなのだ。

戦前から、日本は欧米の文化を受け入れてきたのだが、実際、その国民性も受け入れていたのではないか?

たとえば、スマイルズ(中村正直訳)の「西国立志編」が国内でよく読まれたなど、諸外国の成功事例に興味があったことだろう。

それらは、大統領になったり、カーネギー(鉄鋼王)になったりというような、ほとんどの人には、現実的に無理な夢だが、当時の人はそれを受け入れていたのではないか?

結論として、そのアメリカ伝来のハードワークすなわち内部思考型の思想に後押しされたお陰様もあって、日本は高度成長を実現したのではないだろうか(年功序列型賃金のルーツはアメリカだと聞いたこともある)?

本書で言うところの、内部指向型の影響を日本国内で色濃く残したのが、現在の60歳くらいまでの年代であり、それ以降の年代の人々は、外部思考型になるという、まぁ、相当ざっくりした分類ができるのではなかろうか、と思う。

現在の日本では、少子高齢化(そして、大量死亡社会)による世代闘争(世代論争)的な意見も散見するのだが、根本的に、世代間の断裂が現実的にあるのかもしれない。

 

そんなわけで、この古い本を読んでいて、まったくの、偶然かもしれないのだが、日本の現状との符合を読み取ってしまった。

本当にそんなことがあるのか、と思う人は読んでみると面白いはずだ。